正しい水の飲み方【全日程、終演いたしました。ご来場、誠にありがとうございました!】 公演情報 劇団えのぐ「正しい水の飲み方【全日程、終演いたしました。ご来場、誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    劇団えのぐ×演劇集団TOY’s BOX ×演劇商店若櫻の3団体コラボ公演は出演者が25名と多く、人物描写や関係性、物語の展開が分かり難いようにも思えたが、伝えたいことは理解できた。タイトル「正しい水の飲み方」は、そこにいる人々の思いを暗喩しており、それぞれの心情を吐露する場面は迫力があり観応えがあった。
    (上演時間2時間)2019.12.21追記

    ネタバレBOX

    舞台となるのは、「我田」という街。真ん中に背もたれの高い椅子2脚、四方にいくつかの椅子が倒れている。下手側奥には机のようなものが置かれている。中央の床には横断歩道線。物語が始まると洗濯物であろうか運動会時の万国旗のように吊るされる。その風景は荒廃・退廃といった印象でダウンタウンを思わせる。物語はこの街に住んでいる住人の ある思いであり、その解消手段"水”の効用?である。

    人には思い出すのも辛く悲しい記憶がある。それを忘れることが出来る”水”がある。正確には何らかの物質が入っており、嫌な記憶を忘れさせてくれる。何となく麻薬のような危険な香りもするが、それには中毒性がないと言う。例えばアルコール依存やニコチン中毒といった、普通の生活においても何かに依存している症状と同じだと言う。その”水”に依存している人が集まる街で、巻き起こる切ない物語である。悲しい思い出は現実にあった交通事故を想起させる。この事故の記憶に蓋をしていること、そしてフラッシュバックしてしまうこと、そのリフレインシーンは笑いと悲しみが同居していることを感じさせる見事な描き方。

    現実逃避、諦めること忘れることを鎧代わりにし、楽しい思い出だけの人生。そんな街-世界から戻ってくることが出来るのか?人の”思い”とはを鋭く問いかける。忘れること、それはその人の存在まで否定しているようで悲しい。しかし描き方は、とても生きづらい世の中、そこに潜む記憶・思い出の中にこそ必要とされるそこはかとないユーモアを漂わせる。底流にある哀惜を心温まる、そして優しさに包んだような松下演出は好きである。

    気になったのは映画撮影のシーンである。我田にいた義兄弟、水のせいで記憶が曖昧になっていたが、効用切れで邂逅出来たようだ。我田にいた時の回想・記録映画として俯瞰した位置にあったのだろうか。劇中に挿入されるシーンが分かったような解り難さが気になった。もう少しすっきりできるのではないか?敢えて言えば、大所帯のための出番で、本当に必要な構成・場面であったのだろうかという疑問である。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/12/19 17:16

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