メモリアル 公演情報 文学座「メモリアル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    最近小劇場でも少なくなったムツカシイ舞台である。
    一時期はわからないのがいい、という芝居が流行ったこともあったが、これはそういう難しさではない。前例を見れば、シュプレヒコールコール劇か。男優女優各三名が、文章の一節を客席に向かって読み上げていく。それがムツカシクナイ舞台では「セリフ」なのだが、対話(ダイアローグ)ではない。かといって、モノローグでもない。ここでは登場人物が、親子、夫婦、兄弟、外国のひと、と設定があるようなないような関係なので、言葉からはストーリーが読めない。ストーリーによる情緒に頼っていないところが新しくもあるのだが、文章そのものは、常識的な政治談議や、日常会話、相田みつお格言のようなことわざ風、時には「舟をこいでいる」と眠っている客への客いじりまであるそれぞれの人物の記憶(メモリアル)の断片である。その選択は現代日本の深層に浮遊している現代の言の葉、とでも言えばいいのだろうか。全体は七つのブロックに分かれて1時間45分、分かれてはいるが裸舞台なので大して変わり映えしない。どんどんムツカシクなっていく。
    と書けば、困った前衛劇みたいだが、近頃、こういう斬新な趣向で乗り切った舞台がほとんどないので、どうなることだろうと、終わりまでハラハラしながら見た。さすが、文学座、セリフの通る役者ばかりで、文章も生きている。しかし、昨年KAATで見た地点のような面白い動きやしかけ(地点の場合は振付と言ってもいいか)で客の方で筋立てを作らせてしまうような演劇的なサービスがないので、見ている方は苦しい。「こういうことよ」とテキストを観客に納得させるのも演出の大きな仕事だ。KAATが面白かっただけに、今井朋彦・初演出ではこの本はいささか荷が重かった。
    この作者に対する期待が大きかっただけに、客もくじけずに次回を待つことにしよう。

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    2019/12/05 23:54

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