美代松物語 公演情報 劇団芝居屋「美代松物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    日本のどこかにありそうな原風景を背景に、これまたどこにでも居そうな人々の暮らしを描いた秀作。原風景は停滞・衰退といった地方都市、いわゆるシャッター商店街を連想させ、どこにでも居そうな人々は、突拍子もないキャラクラーの持ち主も現れず、自分の身近にいる人々が舞台に居る。説明では北国だが、劇中の台詞から北海道の海辺の街といったところ。冬場の北国、寒風吹く様子の音響効果、身震いする役者の演技が本当に厳冬季を思わせる。物語は以前に上演された「料亭老松物語」と連携しているが、今作はタイトルにある小料理屋「美代松」での見せ場が多い。冬場、閉塞といった澱んだ雰囲気を漂わせているが、そんな中にあって「ロミオとジュリエット」を思わせるような恋愛沙汰を取り入れ、微笑ましく和ませる。
    脚本の力強さ、音響・照明といった舞台技術の巧みさ、そして役者の確かな演技力、その全てが調和した見事な公演。上演時間2時間を超えるが最後まで集中できる観応え十分な作品である。まさしく劇団芝居屋の真骨頂、「覗かれる人生劇」を楽しむことができた。
    (上演時間2時間10分)2019.11.30追記

    ネタバレBOX

    冒頭、料亭老松の座敷での日本舞踊によって観(魅)せる掴み。
    舞台セット老松の女将部屋、小料理屋・美代松、街路といった場面が手際よく転換していく。それは瞬時に情景を観せることによって観客を物語の中に誘う。もともと役者の演技力も確かな上に、作り込んだ情景を観せることで気を逸らせない。

    物語は料亭老松の女将と以前この料亭の板前で女将の許婚だった男、それがある事情で破談になる。それ以来疎遠な関係になるが、それぞれの娘と息子が恋仲になる。これだけ観れば北海道版「ロミオとジュリエット」といったイメージだが、これに料亭の経営(高利貸しが絡んだ経営危機)や地域活性化といった庶民の暮らしが描き出される。まさしく芝居屋のスローガンそのもの。

    全体を通して分かり易く、現実にもありそうな物語。それに現在の地方都市が抱える地域事情を絡め、しかも人情と義侠ある人々で豊かに紡ぐ。その現実を丁寧に描く公演は観応えがあった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/11/29 16:48

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