満足度★★★★★
日本のどこかにありそうな原風景を背景に、これまたどこにでも居そうな人々の暮らしを描いた秀作。原風景は停滞・衰退といった地方都市、いわゆるシャッター商店街を連想させ、どこにでも居そうな人々は、突拍子もないキャラクラーの持ち主も現れず、自分の身近にいる人々が舞台に居る。説明では北国だが、劇中の台詞から北海道の海辺の街といったところ。冬場の北国、寒風吹く様子の音響効果、身震いする役者の演技が本当に厳冬季を思わせる。物語は以前に上演された「料亭老松物語」と連携しているが、今作はタイトルにある小料理屋「美代松」での見せ場が多い。冬場、閉塞といった澱んだ雰囲気を漂わせているが、そんな中にあって「ロミオとジュリエット」を思わせるような恋愛沙汰を取り入れ、微笑ましく和ませる。
脚本の力強さ、音響・照明といった舞台技術の巧みさ、そして役者の確かな演技力、その全てが調和した見事な公演。上演時間2時間を超えるが最後まで集中できる観応え十分な作品である。まさしく劇団芝居屋の真骨頂、「覗かれる人生劇」を楽しむことができた。
(上演時間2時間10分)2019.11.30追記