三姉妹、故郷を探す。 公演情報 ザ・小町「三姉妹、故郷を探す。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台には古びたコゲ茶色のベンチ、そして電信柱、ではないが同様に古びた街灯の胴体。背後には大型団地の遠景(写真が横広に)。確信的に別役芝居の向うを張る気だと期待値が上る。暗転し明るくなると、旅姿の三姉妹が下手に折り重なる格好で板付き、しばしの間あって台詞劇の開始である。
    とぼけた台詞の応酬から意表を突く展開へと芝居は進むが、別役とは違うやはり現代の作家だと実感する。時々風が吹くのだが、何か音楽的響きが混じっているようでよく聞き取れず、台詞ともかぶり「よく判らないノイズ」となる(餌をやっている鳩が飛び立つ音も妙に尺が長いのが1パターンのみで意図的なのか下手なのか分らない)が、しかし演出意図としては別役の風の「変奏」だろうと推測。
    さて別役の「現実」と「異界」の境界を渡るような微妙でスリリングな台詞運びには及ばないな、と感じる前半が、後半伏線となって芝居は奇天烈な様相を呈する。シュールの極みは唯一の男優・可知氏(老齢の様子)を父として三姉妹と一家族を作ったその夕食時の長い会話中、可知氏のために台詞の書かれたカンペの紙皿や器、鍋の具を、堂々と彼に示しながら、芝居が当たり前の顔で進行して行くサマである。父役に馴染んで行く渋い可知氏の芝居も味わい深く成立して行くのは反則技だが言い難い痛快さを覚える(仕舞いには若い女がTV番組のADよろしくステージ前に座って堂々とスケッチブックのカンペを一枚一枚めくっていた)。老俳優がまた「読みながら」の演技で十分味を出す。
    戯曲の狙いに届いていない三姉妹の演技が部分部分にあったが(別役作品も同様、俳優にこのシュール世界の演技は難物)、三女優が足掻く姿が清清しく、内心応援したい気になっている。それは仮初の家族を夢見、たまさかそれを得て図に乗ったり、失ってガッカリする彼女らの本来的な寄る辺無さに、当て所なく生きざるを得ない現代と同じ地平がみえたからだろうか。
    この作品の持つ批評的切り口はもっと鋭利に研がれたく、辛辣に突き放してくれてもいいのだが、と(別役ファン故だろうか)思う所はある。

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    2019/11/27 13:14

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