Dear Me! 公演情報 青春事情「Dear Me!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「新宿にしぐち夜間保育園」を舞台にした社会喜劇は観応え十分だ。3年ほど前に「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログが話題になったが、いまだに保育所探しは大変である。同時に子供を育てることの大変さも描き、社会的な問題と個人(家族)的な問題の両観点から捉えた秀作。芝居としては、ラストの園長の激白シーンは胸が締め付けられるような感動を覚える。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    新宿歌舞伎町の ど真ん中にある夜間の無認可保育園が舞台。正面窓には、ネオンを思わせる照明。セットは保育室内、おもちゃ箱や絵本がある棚、もうすぐクリスマスということもあり飾り付けの数々が微笑ましく感じられる。下手側奥が子供達の寝室になっており、親や保育士が子供の寝顔を見る時の優しい眼差しが印象的だ。先に書いた保育園数が足りなく子供を預けられないという社会(公)的な面も底流にあることは間違いないが、この公演では預かる保育園、預ける親という私的な観点から描いている。

    親として子の成長に対して愛情や責任を持つという当たり前の感覚が痛いほど伝わる。だから違法もしくは子供に説明し難いと知りつつも、仕方がないと割り切って仕事をしている。それがいつか子供に悪影響を及ぼすと慄きながら...。最近、親による子供への虐待という悲しいニュースが多い中で、この公演は切羽詰まった状況の中でも子供優先に考える親の奮闘、子育てを通じて味わう悲喜交々がストレートに伝わる。だから何の変哲もない場景の中に温かさを感じることが出来る。そこに小難しい理屈は不要であろう。

    保育園長の苦悩...親(寺前)から結婚しているのか、子供の有無や育てた経験を問われた時、自分は子供が出来ない体質であること、その結果 離婚した経緯を話す。”子は親を選べない”というが、実は 子はちゃんと親を選んで生まれてくるのだ。この親の子になりたいのだと…。その選ばれた親が子に恥ずかしくないような生き方をする、間違ったら謝る。そんな当たり前のことが大切なのだ。説教的になりがちであるが、公演全体を通して面白可笑しな観せ方(父ちゃん坊や)や意外性(園長の幼馴染の職業)など、絶妙なバランスの演出が教訓臭くさせない。親もときどき肩の力を抜いて という台詞には共感してしまう。

    子供の育て方は一律ではない。子供の数だけ、または親の数だけ育て方がある。絵本の読み聞かせが秀逸である。他の象と違うことで仲間外れに悩む象が主人公、その読み聞かせは保育の教科書的な教えでは感情を交えず淡々と話すこと、しかし保育士(佐藤)の母親は女優で手ぶり身振りを交え感情表現豊かに聞かせる。それに反応する子(心)。子もまた個性を持った1人の人間であり、子供という一律の括りではない。保育室という狭い空間の中に人間の優しさ愛情が溢れんばかりに輝いて観える秀作。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/11/15 00:04

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