記憶のプロセス
記銘 encoding
保持 storing
想起 retrieving
になぞらえて物語が展開する、a really intriguing and electrifying productionで、
発散と収束、その重ね合わせの狭間を絶妙なタイミングで揺れ動く
バランス感が抜群。
舞台天井付近の美術は、多数のニューロン、グリアなどから構成される、
また、"創発(emergence)"の一例でもある、脳の複雑な神経回路
ネットワーク、コネクトームを連想させる。場面ごとの照明の色調に応じて
美術のきらめきが変化する様は、ニューロンが至る所で発火し
状態が時々刻々変化している今まさに活動中の脳のイメージに重なる。
その下で、脳が次々とつくり出している内面世界をあたかも
左右の外からリアルタイムに覗き見ているかのような幻覚さえ
抱かせる舞台空間による雰囲気づくりも好印象。
David Eagleman『Incognito The Secret Lives of the Brain』
(デイヴィッド・イーグルマン著『意識は傍観者である』
で早川書房から邦訳が出ている)
養老孟司 著 『唯脳論』(ちくま書房)
などが観劇前でも後でも参考になるかもしれない。
ついでながら、serendipityもやや意識してか、劇中で何度か出てくる
「幸運は備えある者を贔屓する」
は、ルイ・パスツールのものとされる言葉のことか。