元号狂騒曲 公演情報 劇団恋におちたシェイクスピア「元号狂騒曲」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    「事実は小説より奇なり」というが、この公演は事実、それも最新の時事ネタを盛り込み描いているが、現実はそれ以上に不思議で えぐいものだろう。多くの問題を抱えた政治家、官僚、御用学者が改元に振り回される様子をシュール・コミカルに描いた公演。官僚が出世に目がくらみ、改元に絡んだ国家的プロジェクトで忖度が横行する様を直接的に描いているため、面白い反面、わざとらしく感じられるところが少し勿体なかった。公演の最後に風刺であると言いつつ、現実を連想させるあたりは…。
    さて自分は、元号に関わる内容とは別のところに関心をもった。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    セットは机をL字型に配置し、上手側にボードが置かれているだけのシンプルなもの。
    物語は、現首相の名前もしくはその夫人の名前の一部を新元号に入れるために画策する官僚。その企てを元号選考委員として選ばれた漢学者へ忖度させるような内容。展開は金品、名誉付与などの典型的な賄賂攻勢。
    同時に内閣情報調査室の身上調査の不気味さ恐ろしさを垣間見せる。内閣情報調査室は、日本の諜報機関と陰口を叩かれるところであるが、この公演でもプライベートなことを調べ上げ下級官僚に言うことを聞かせる、こんなところに調査した秘密を利用する怖さ。

    当日パンプに、本公演は過去の「元号狂騒曲」を基にわずかな登場人物の名前と”新元号発表にまつわるドタバタ喜劇”という要素を残し、と記載されている。登場人物が6名であることから物語の構成はシンプルで複雑な政治的思惑は描ききれていない。いくつかのメディアが報じる記事や噂といった虚実の内容を断片的にデフォルメして観せる。シンプルな構成だけに面白可笑しさはストレートに伝わる。現実には複雑に絡んだ組織的な忖度行為であろうが、公演では個人を組織として見做しているため理不尽という個人感情に止まっている。どうしても組織的という狡猾で闇深い、そして圧倒的な不合理が観えず、個々人の思惑という利己的(スケールの小さ)な行為としか観えないところが残念だ。この種の政治・経済問題が好きな人だったらもっとテーマを深堀してと言うかも...。

    政治の裏舞台...改元号に関する忖度・セクハラ・賄賂等、今話題のテーマ設定は面白く興味が尽きない。残念な点はあるが、それでも目先の利益に狂奔し、コトがバレると責任も取らず遁走する、その醜態が面白可笑しく描かれる。
    ラストは、忖度に踊らされた下級官僚が、結婚相手とのデートでは共通の趣味ばかりに盛り上がり、肝心な主義主張(政党)が異なることに気づかされ愕然とする、そのシュールな描きは皮肉を込めて見事な結末であった。

    演出として、場所や状況説明は横長紙でフリップイメージで見せ、場面の転換を表す。併せてネットニュースによる説明も加え時事問題を生々しくさせる。丁寧な演出とも思えるが小道具が稚拙な感じで勿体なかった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/10/27 22:45

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