ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」 公演情報 TBS「ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    最初案内を見たときは馬鹿にしていたが、絶賛口コミを見てチケット入手。かみさんと見た。素晴らしい、の一言に尽きる。さすが歴史に残る名作中の名作。7,8年前前、某有名演劇評家とお近づきになり、「最近のブロードウエイでは何がいいですか?」と聞いたら、「なかなか『ウエスト・サイド・ストーリー』のような画期的な作品がないんだよね」と話していた。その時は、やけに古い作品を持ち出して比較するなと思ったが、実物を見てみると、そう言いたくなる気持ちがよくわかった。

    歌も主役の二人はもちろん、アニータがメインの「アメリカ」など、非常にうまい。マリア役のソニア・バルサラの透明な伸びのある高音はさすがである。トニー役のトレヴァー・ジェームス・バーガーもテノール的声質で甘く力強かった。さすがクラシック界のスター、バーンスタインの作曲だけあって、オペラ的な要素があると感じた。
    その他の場面も一つ一つ、本当に素晴らしい。特に前半は集団的なダンス場面がつづき、ダイナミックでスマートなシーンの連続で、見せ場に次ぐ見せ場という感じ。後半は「サムホエア」が何もない舞台で幻想的かつ叙情的でよかった。

    ダンスもセット美術も、映像を使った演出も、歌詞も、全て素晴らしいが、なによりバーンスタインの音楽があればこそだろう。ジャズやバルトーク的な前衛味も取り入れた、斬新でポピュラーな音楽。バックで生演奏していたが、トランペット中心にした金管の響きとパーカッションのリズムが大変良かった。とにかく、書いても書いてもいいところは尽きない。抜きん出た傑作である。若いキャストもよかった。

    ネタバレBOX

    「ロミオとジュリエット」の翻案なので、てっきり二人とも死ぬものと思ったら、違っていた。途中マリアが「特別な薬を手に入れてきて」とアニータにたのむあたり、「やはり仮死状態になる?」と思わせる。が、これはいわばシェークスピア作品への目配せ。その後は少し違う展開になる。

    大体、「ロミオとジュリエット」のあの罪作りな司祭に当たる登場人物がいないのが「ウエスト・サイド・ストーリー」の特徴。ふたりの秘密の結婚の場面は、星空に「トゥナイト」を歌うロマンチックなバルコニーの場に変わっている。従って、ジュリエットが仮死状態になるなどという作戦もない。シェークスピア研究者からはあの司祭こそふたりを死なせた張本人みたいにいわれるくらいなので、司祭がいなければエンディングは当然変わってくる。見ながら思ったが、合意の心中でもなければ、二人とも死なせるというのはなかなか難しいのである。WESのラストは非常に無理のない、納得できるものだった。

    そしてプエルトリコ系とポーランド系の移民の若者たちの争いに、最後にベルファストからサンフランシスコ、パリetc、現代のテロや銃乱射事件がダブる演出。作品のテーマを普遍化して、現代につなげるものだった。

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    2019/10/26 09:24

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