「隣の家-THE NEIGHBOURS」 「屠殺人 ブッチャー」 公演情報 名取事務所「「隣の家-THE NEIGHBOURS」 「屠殺人 ブッチャー」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/10/21 (月) 14:00

    「屠殺人ブッチャー」を観劇。
    謎めいたオープニングから怒涛の展開、あっと驚くラストまで一気に見せる。
    多民族・多様性社会のカナダから発信する、凄惨な民族紛争の実態が衝撃的。
    生ぬるい日本に居ると遠い出来事かもしれないが、その普遍性は今とてもリアルだ。
    役者陣には過酷な設定だが、それをモノともしない力量を見せつけて素晴らしい。
    それにしてもあまりに鮮やかな騙し方で、騙されたこちらはむしろ爽快。
    この作家、一体何者なのか?


    ネタバレBOX

    いかにも警察署らしい無機質でそっけない空間。
    警部がひとりと、椅子に座ったきり動かない軍服の老人。
    そんなシーンから始まる。

    警察署の前に置き去りにされたというこの老人は
    一枚の名刺を持っていた。
    その名刺の主である若い弁護士が呼ばれ、怪訝な面持ちで署にやって来る。
    老人は時折、聞いたことの無い言語を発するほかは反応がない。
    通訳として呼ばれた女が到着し、老人の身元調査が始まる・・・。

    拷問の跡、古い軍服、25年前の激しい民族紛争、
    そしてインターポールから追われる戦争犯罪人・・・と小出しにされる情報。
    やがて老人の過去が暴かれ、復讐が始まる。
    いや、実はとっくに始まっていたのだが。

    ラストのどんでん返しが鮮やかで、これまでの話がひっくり返ってしまう。
    巧みに張られた伏線は想像を軽々と超えて回収されていく。
    重い主題でありながら、演劇の楽しみを見せつけてくれる。

    役者陣が皆素晴らしく、特に渋谷はるかさんの迫力には圧倒された。
    ここまでしないと気が済まない怒りが、隙なく漲っている。

    2年前の再演だそうで、以下アフタートークからの情報。
    作家が2人の言語学者と共に創り出したという架空の言語に説得力がある。
    台本に英語の発音記号がついているというこの創作言語は、一切アドリブなし。
    役者陣を悩ませたに違いないが、ナチスを思わせる、
    特定の民族を粛清しようとする独裁政治がとてもリアルに立ち上がる。
    再演のたびに、世界のどこかで起こっている事実と重なって
    その普遍性が際立つだろう。

    2年前の小笠原氏の演出と、ラストを変えてみたと言う扇田氏。
    私には今回の方が、復讐の鬼の“赦さない自分”の虚ろが見えて
    深い余韻を残したように思えた。






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    2019/10/22 01:20

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