満足度★★★★
鑑賞日2019/10/21 (月) 14:00
座席1階
原題「Quiet in the Land!」。日本語訳はなかなか雰囲気がある。アーミッシュを日本語であらわすといかにもそんな感じかな、というイメージだ。しかし、この舞台は「静かに」という感じではなく、アーミッシュの中での宗教的解釈、世代間対立を織り交ぜて激しく揺れ動く。
服装や付け髭など小道具にもこだわったという。といっても、自分は本物のアーミッシュをみたことがなく、現代や一昔前の彼らの姿を舞台が再現しているのかどうかはわからない。なんとなく日本風な感じもしたのは気のせいか。
おばあさん役を演じた劇団文化座の中心・佐々木愛の存在感は今回もやはり大きい。しかし、パンフレットによると初舞台だという、今年入座したばかりの女性が演じたケイトという主役級の女性・深沢樹の演技は光っていた。老舗劇団にとって、新陳代謝は喫緊の課題。いい人材が入ってきたのではないか。
休憩をはさんで3時間近い長丁場ではあるが、物語の展開がおもしろいのであきさせない。舞台芸術の永遠のテーマかもしれない、変わらずに維持すること、変わっていくことという命題を深く考えさせられる。
アーミッシュは国ではなく、その一族郎等のコミュニティーだ。だから、その伝統や文化を守るためには変わらないことが重要なのだが、やはり、国の中で生きていく以上、世の中の変化と無縁ではいられない。劇中では電話の利便性をめぐる会話もあったが、今でいえばインターネットなどの情報通信技術などとのかかわりはどうなっているのだろうか。
アーミッシュがその様式をかたくなに守り続けているのは、平和に暮らしたいだけだからというくだりがあった。そこには強く共感する。だが、グローバルな世の中の中で、平和に暮らすということの難しさは今の世界情勢を見ればわかる。だからといって、自国や自らのコミュニティーを守るために銃を取って戦うのか。劇中で出てくるエピソードは、現代日本が平和な暮らしを守るために米国に追随して銃を取るのか、ということを強く投影していたと思う。