花隠想華 公演情報 ZERO Frontier「花隠想華」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    公演の魅力は、妖しげな登場者によるアクション、ダンスといった身体表現の素晴らしさと民俗・伝承を題材にした物語性だと思う。そして舞台美術がその怪しげで謎めいた空間を演出していると言っても過言ではない。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    場内に入ると、鬱蒼とした山の中といった雰囲気を漂わす舞台セット。山中を表す高さ、やや上手側中段に神社の鳥居が立つ。木々が茂るセットだが、特に上手・下手の両側は本物の竹を配している。段差があることから、その上下運動は躍動感を表す。

    不思議な夢、それが正夢のようになる現実...ここから物語は始まる。ラスト近くに明かされるが、この地は”遠野”だという。もっとも今作で登場するのは架空の国「やまとの国」であるが、どうしても岩手県遠野、その民俗・伝承もしくは伝説を連想してしまう。登場するのは女鬼(「山都」に住み)、男鬼(定住せず山を渡って生きる「山渡」)、天狗(「山門」に住む)で、住んでいるのは みな「やまとの国」の中。この人間以外の者が住む場所に人間が迷い込み、それによって起こる奇怪な出来事が観客を時間も空間も超える劇の深みに飲み込んでゆく。この迷い込んだと思われた人間は、理由(わけ)あって意識的にこの地へやって来た。過去と現在、その300年の時を経て明かされる真実が切なく悲しい。人間と鬼を結ぶ出会い・友情から、この地(山)の神となって見守るへ繋げるのは、アナグラムの機知、緩い笑いと逸脱を盛り込んだ脚本の面白さ。そして「事実と真実は違う」などの台詞で心に響かせる。

    女、男それぞれの鬼や天狗、その隠し事や思惑が交錯し謎めいた物語に観客を引き込んでゆく。山の神へ神事(女鬼といえども実娘は犠牲にしたくないという本音も垣間見える)...それを女鬼による華麗なダンス、その結果起きる不幸な出来事に起因する男鬼と天狗の格闘、そのアクションの迫力は観応え十分。登場する者のキャラクターをしっかり立ち上げて、個々の役どころの演技とダンス等のアンサンブルとしてのチーム力を発揮するというエンターテイメントな各々の観せ方が実に上手い。

    最後に山中の物語であるが、海を治める神や人格を解し万物に精通するとされる星獣が現れたりと世界観を広げるなどサービス精神?もあるような公演であった。それこそ、民俗・伝承を通してこの地は人間だけが住んでいるのではなく、他の動植物も含めてという暗喩であろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/10/14 18:40

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