満足度★★★★
明治・大正・昭和の三代の天皇を主軸に据えた見事なる『ゴッドファーザー』。日本の近代史と謎めいた天皇という存在を一家族の叙事詩に歌い上げる。日本という国がどういう国なのか、眼前に突き付けられるかのよう。維新から敗戦まで存在した『大日本帝国』興亡録としても面白い。本当は大河ドラマでこういうものをこそ製作しなければいけない。タブーばかりで、覆ってしまうから歪な国になってしまった。
大正天皇を演じた西尾友樹氏の人懐っこさが作品全体の優しいムードを醸し出す。ジブリっぽくもある。後半、髄膜炎の悪化と共に何度も何度も激しく転ぶ様は心配になる程。素晴らしい役者。
偉大なる父、マーロン・ブランドに憧れと拒絶を併せ持つアル・パチーノが『父よ、貴方ならこんな時どうしたのか?』と自分の無力さに途方に暮れる、そんな気分になる日本史。宿命(さだめ)という言葉の余りにも重いこと。