舞台「オトナインデッドリースクール」 公演情報 松扇アリス「舞台「オトナインデッドリースクール」 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/10/05 (土) 13:00

     2019.10.5㈯ PM13:00 池袋シアターKASSAI

     前日に引き続き、夏の日差しを背中に、涼やかな秋風を踝(くるぶし)に感じながら、池袋シアターKASSAI へとSetsukoさんの出演されている松扇アリス第一回公演『オトナインデッドリースクール』を観に足を運んだ。

     ベンチシートに腰を落ち着け、正面へ目を転じると、目の前に現れるのは区役所の屋上。

     話は全て、この屋上で進んでゆく。

     区役所の屋上で総務課の墨尾優(七海 とろろさん)と百村信子(遠藤 瑠香さん)が漫才の練習をしていると近所の人々が駆け込んで来るのだが、その人々を見ると怪我をした者、常軌を逸した者、手に血に濡れた金属バットを持った商店街でバーを営む紅島弓矢(高瀬川 すてらさん)の姿があり、理由を聞くとふたりが知らぬ間に、世界は死体が蘇り、生きてる人間を襲い出す地獄と化していると言う。

     屋上に集まる様々な境遇のオトナたちを目の当たりにしたユウとノブは、恐怖と絶望の狭間でふたりは、漫才をするという「えっ?何で?」
    という決断を下す。夢も希望も失われた世界で、オトナたちは笑って生きられるのか?という、SFとファンタジーとシリアスとコメディーを魔女の大鍋に入れてかき混ぜたような不思議だけれど、妙に現実的でいながらやっぱりとんでもなく非現実的な世界が繰り広げられる。

     『オトナインデッドリースクール』は、本日が千穐楽なので、これからご覧になる方もいらっしゃると思うので、ここでは、全体の感想を書かせて頂きます。

     この屋上は、人生の縮図であり人生の坩堝だと思った。

     此処に集まって来た人々は、年齢も性格も職業もそれぞれが悩みや秘密、痛みや悲しみも様々な人々。

     孤独で弱いのに虚勢を張り、人を見下すような物言いで、斜めに物を見ている風を見せる辻井(八木橋 里紗さん)、しっかりしてそうに見えて、アイドルになりたかった愛らしい一面と市民を護る強さを併せ持つ青池市長(Setsukoさん)、明るくおちゃらけているように見えて、臆病で寂しがり屋で、それでも前に進もうとするユウ(七海 とろろさん)、ぶっきらぼうで一見怖く見えるが、拘らない強さと潔さの中に温かさを持つ紅島(高瀬川 すてらさん)、高校時代、自分の不始末を紅島のした事と誤解された儘にした事に負い目と痛みを感じる高森(市倉 有菜さん)、いつもユウを穏やかに見守りながら芯に強さを秘めたノブ(遠藤 瑠香さん)など、穏やかな日常から一転、恐怖と絶望渦巻く屋上に集まった人々の吐露から浮き彫りになるそれぞれの抱える悩みや痛みと人生の縮図であり坩堝。

     それはまた、観ている一人一人にも重なり、抱えるものでもあるのではないだろうか。

     ファンタジー或いはコメディーのように見えながら、人間の持つ弱さと強さ、醜さと美しさ、悲しみと喜び、笑いと涙、そして、生と死というテーマを笑いの中に、ハッと胸を衝かれる言葉共に宝石の原石を呑んだ鉱物の煌めきのように瞬き、観ながら様々な思いや考えが全身を過ぎり、最後に掌に残った言葉は、それらを全て引っ括めてもなお、この舞台最高に面白い!だった。

     『オトナインデッドリースクール』は、今日が千穐楽ですが、10日は、全員男性だけで紡ぐ『オヤジインデッドリースクール』が始まりまるので、興味を持たれた方は是非劇場へ。

                    文:麻美 雪

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    2019/10/08 13:26

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