三十と十五の私 公演情報 神保町花月「三十と十五の私」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    タイトル通りの30歳と15歳の私が、時を往還しその年齢における女性の心情という視点で描いた秀作。夢見る15歳の少女、焦燥・苛立つ感情があらわになる30歳女性。その間の15年間の経過を語ることなく、思春期と自立期の対比として観せる。そして15歳のある事をきっかけに物語は進展するが…。実は物語に人生の節目、選択における「たら れば(サブリミナル効果?のような)」も刷り込んでくる巧みな演出だ。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台美術は収納Boxを組み合わせ、上手・中央・下手側の壁際に配置し、中央にテーブルがあるだけのシンプルなもの。Box内には固定電話や小物が飾られている。セットによって時代間隔や学校・家庭という固定観念を抱かせないよう、あえて機能的な造作にしていると思われる。
    主人公・エナ(西田さおりサン)は15歳で妊娠、その処置をめぐる女友達の言動。また、その事実を知った彼氏・時夫の態度・行動が表層的に描かれる。女友達は親身のようで、他人事のようである。彼氏は中絶前提の行動。現実的なものの考え方なのだろうか。時の流れは、もちろん衣装などで一目瞭然であるが、些細であるが携帯電話・スマホの違いなど台詞にも表れている。

    時を経て、30歳のエナ。会社をクビになり実家に帰ってきているところに同窓会の案内が...。過去の出来事と現在の心境が混じり苛立つ。髪の毛を掻き毟る、物(ダンボール)を投げる、椅子を蹴るなど、その激しい行為(表現)に胸が痛む。友達関係も上辺だけなのか、あまり会いたくないと思う気持ちも垣間見える。観たら感じられる表現も文章にするのが難しい。そんな女性の心の内を描くのは上手い。女友達の結婚話、中学時代の影の薄い友人、夜逃げした中学時代の親友、継母、母の連れ子(弟)の関係など盛り沢山のエピソードを散りばめ面白可笑しく観せる。

    人生に「もし、あの時に戻れたら」という思いも描く。中絶した現在の在り様、子供を生んだ人生がどうだったのか...こちらも幸せそうに描いている。何気なく挿入される別人生。少し違和感も感じるが、中学生のエナと中学生のカナが同じ時代(同時に登場しないが)に生きているような、そこに母娘の親和性を抱かせるような不思議感覚がある。さてエナの15年の時を隔てた自分との邂逅、別の選択をした場合の夢想...その両方の描きはハッピーエンド。そこは作・演出の梨澤慧以子女史の優しさの現れであろう。

    テンポが良いことから心地良く観ることができる。一方、その流れるように観えることが、インパクトある出来事の割りには印象が薄い。やはり登場人物が皆善人なんだろうか。30歳という若さに少し翳りの見えた年齢...15歳の時からすれば30歳女性は大人だと...しかし、そこには未経験という錯覚がある。これはこの先40歳、50歳も同様かも。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/09/29 23:36

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