絵師 松蔭堂 公演情報 Project JUVENILE「絵師 松蔭堂」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    公演の魅力は、大正時代と絵師というあまり観られない設定の中にミステリー風の物語を紡ごうとしているところ。それは舞台美術や衣装などで表し、ミステリーは活動(映画)屋や風鈴屋の存在や妖しげな風貌で魅せる。
    しかし、物語にひねりがなく直截的な描きになっているため、時代設定や絵師という職業を活かしきれていないところが残念だ。せっかく舞台美術などで雰囲気を出しているのに、その演出効果を十分に活用できていないのが勿体ない。
    (上演時間1時間40分) 【桜花チーム】

    ネタバレBOX

    舞台セットはそれほど広くない劇場にもかかわらず、上手側に2畳+縁側の部屋を設え、和箪笥、障子戸を配置し、さらに外には桜の樹があり和空間を演出している。下手側には縁台らしきものが1つ置かれている。登場人物は大正という時代や職業を意識した衣装であり、男女とも洋装や和装姿、そして絵師らしい格好、夜鷹の色香ある着物姿など見る楽しさ。さらに風鈴屋の顔のタトゥーペイントなど観(魅)せ方に工夫や凝らしがある。

    梗概は説明にあるが、絵師を生業とする室谷松蔭は「平穏」を題目にした絵を描けずにいた。そんな時、松蔭は疎遠になっていた旧友、江崎兼光の妻 詩子の訃報を耳にする。兼光の見舞いに訪れた松蔭が、その姿に違和感を覚え、共通の悪友である面屋と探りを入れると…。日本の信仰で知られる「百度参り」。その信仰を物語の中に取り入れ、風鈴を100個集め亡くなった妻を蘇らせるという祈願をミステリー風に描く。ラスト、それを桜の樹との関わりで印象的に魅せる。
    また 八重との かくれんぼ 遊びを通して無垢・無邪気さ、一方神隠し・誘拐などにあうとの言い伝えを場面場面に落とし込む。それによって物語に妖しさを漂わせようと試みている。

    物語の雰囲気作りが優先し、話にひねりがなく奥行きが感じられないのが残念。もう少し展開にメリハリと意外性があると物語に引き込まれ観応えがあったと思う。
    一方、人の優しさ、愛情、愛するがゆえに歪んだ行為など、人に背負わせた心情の設定は上手い。そして知恵遅れと思われる八重を通して、人はそれでも生きて行こうとする光明を見せるようで...。演出・舞台美術と脚本に良い悪いの差があり過ぎて、もう少し公演全体の上方バランスに工夫が必要だろう。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/09/29 00:05

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