盆がえり 公演情報 演劇集団よろずや「盆がえり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    2005年と2016年の劇団転換期に上演しており、今回は3都市での公演を実施しているという。再演を繰り返していることから劇団の自信作と思われたが、まさにその通り観応えがあった。舞台は広島県世羅郡であることから、台詞は広島の方言で本当にその場所に居るような感覚になる。第2の故郷が広島県である自分には、懐かしく郷愁を覚えるほど上手な喋りであった。
    「盆がえり」…広島公演を皮切りに今の時期(8~9月)に相応しいタイトルと内容は、心に染み入るような物語。3姉妹が抱える問題や確執を、地方(地元)暮らし都会暮らしの悩みに絡め、親戚や幼馴染という身近な人々との関りを交え淡々と描く。同時に祖先の霊を祀るというお盆という風習に絡めたちょっぴり不思議でジ~ンとするような出来事が…。
    東京公演が4公演しかないのが残念だ。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台は、広島県世羅郡にある築100年の古民家。セットはその離れの和室(今は物置として使用)。要らないものを整理しているらしくダンボールが積まれている。そして盂蘭盆会らしく盆灯篭が天井四方に吊るされている。

    梗概は、実家を継いだ三姉妹の次女・美佐(鈴木ありさサン)が、新婚の夫と共に初めて迎える「お盆」。東京でキャリアウーマンとしてバリバリ働いている長女・枝実(竹田朋子サン)、市内の大学で助手として研究者の途を歩み出した三女・希梨(山口晴菜サン)、そして次女の夫・亮治(赤穂神惟サン)は、慣れない土地で何とか溶け込もうと努力している。それぞれがいる場所や立場で一生懸命生きている。この地も決して便利ではなく(「スーパーが8㌔先に出来た」という台詞)、それでも何となくこの地を離れることが出来ない。そして幼馴染の言葉によれば、両親の姿を見ていれば将来の自分の姿が見える、という。先祖の墓守をするというが、逆に諦念とは違う意味で祖霊信仰の影響を思わせる。

    再演を繰り返していることから、3姉妹の悩み、確執はこの劇の見所であるため伏しておく。ただ、描かれている悩みや確執は地方のそれも山間部にある古民家という土地柄だけではなく、都鄙関係なく持っている感情ではなかろうか。むしろ土地柄は夫がこの地の方言をはじめ農作業など慣れない暮らしに見えてくる。そして好きなことを諦め家業を継ぐ継がないの話題を幼馴染がさりげなく語る。この人の機微と暮らしの描き方が実に上手い。お盆の風習を通して美佐、亮治の夫婦としての愛情の確認も出来た貴重な経験、ここに肉親ではない人との関わりを観せる。

    演出は、衣装の使い分けが好かった。冒頭、美佐がデニム短パンで夏らしい時季感を表し、希梨が農作業のため もんぺ姿、枝実はキャリアウーマンらしいスーツ姿で帰省。それが祭りへ繰り出すために浴衣姿へ。この姿によって抒情感を醸し出し、ラストのこの時期ならではの不思議な出来事...余韻付けが巧い。もちろん蝉、祭囃子のような音響効果、淡い照明色を諧調させ「お盆」という雰囲気を安定的に演出する。そして演技は本当の3姉妹のようで、夫はその姉妹に振り回されつつも、感謝される貴重な存在を上手く演じていた。
    劇団の転換期に上演しているとあるが、劇団にとって今がどのような時期か分からないが、ぜひまた観てみたい公演だ。

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    2019/09/15 16:57

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