ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~ 公演情報 東宝「ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    様々な意味で面白かった。何より、後半に明らかになる意外な秘密が、この作品を深いものにしている。息子に男らしさを押し付け、自分の分身を作ろうとした家父長的なハロルド(益岡徹)。不況を乗り切るため、炭鉱主として140人の鉱夫のクビを切って新しい機械を導入しようとしている。合理的だが、それだけに無慈悲な経営者である。それと、対立する炭鉱夫頭のベイリー(立川三貴)、進歩的な青年のケレンス(岡田将生)。イギリスの炭鉱が舞台なので、期待はしていたが、期待以上に労働者と資本家の対立を織り込んでいた。そこに10年前のハロルドの息子の事故死が、人々の生き方のうえで大きな意味を持ってくる。そして、最後には芸術の役割を考えさせる。

    舞台は1937年だが、イギリスでの初演は2013年。一見古風だが、それだけではない。現代的かというと、それほどでもない。過去と現在を貫く普遍的な社会問題、芸術論、人間の生き方の問題を描き出していた。セット美術は重厚で、幽霊が出そうなイギリスの古い邸宅をよく再現していた。演出は奇をてらわず、いたって正攻法。俳優七人の少人数ながら、広い舞台を十分に使っていた。俳優は、岡田将生はじめみな好演。ハロルドの妻役の木村多江の、静かな中に大きな動きを秘めた所作も良かった。現代のノラのようであった。照明もメリハリがあって、良かった。

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    2019/08/15 08:39

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