満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/10 (土) 13:00
座席1階B列9番
2019.8.10 PM13:00 新宿シアターモリエール
太陽が背中に照りつける、土曜日の新宿をREONさんが初プロデュースし、出演されたREON NEO COMPANY 第一回公演『BATTLE ROCK MUSICAL 迷宮の扉』を観に新宿シアターモリエールへと足を運んだ。
前から2列目真ん中左手寄りの席に着き、舞台に目を転じると、舞台の奥に透かし模様の施された鉄の扉が、現在と過去、彼岸と此岸を隔てる境界若しくは結界のようにある。
この扉を巡って繰り広げられるのは、千年の昔、欺瞞と憎悪に溢れ混沌としていた世界で、人々の心の中には悲しみが満ち、目が覚める事にすら失望する程希望のない日々の中で、平和を願い、ただ祈ることしか出来ない人々と世界を「アルク」という青年が、彼の作り出す「音楽」で善も悪もその想いの強さが開く事が出来るという、人々の最後の希望である「門」を開け、世界を浄化したという英雄伝が語り継がれる平和に満ち溢れた現代に、「アルク」の意思を引き継ぎ、「音楽」を創り、千年前に「アルク」の音楽によって扉の向こうに封じ込めた絶滅者ギルファーを復活させようと暗躍するギルファーの部下たちが送り込む刺客と「音楽」の魔法で戦い人々を守り続ける人気ロックバンド「レゾンデートル」の元に届けられた一枚の楽譜によって起こる、『迷宮の扉』=パルスゲートを巡っての物語。
BATTLE ROCK MUSICALと聞いただけでワクワクする。全編オリジナル楽曲、歌、ダンス、殺陣、芝居が融合し、凝縮したREONさん初プロデュース、REON NEO COMPANYの第一歩となる舞台は、幼い頃ヒーロー物を見て育った世代の大人はもちろん、今ヒーロー物に夢中になっている子供も楽しめるカッコイイロックファンタジー。
出演されていた役者さんもダンサーさんもとにかくカッコイイ。
テーマになっているのは『絆』。人を信じること、人を信じ仲間を信じ、思いやることによって生まれる力、『絆の力』。
その絆の力を利用し、絆の力を弱める為巧妙に創られた疑心暗鬼、不和をもたらす楽譜を仲間を思うが故に、時に仲間に厳しく接するクロエ(REONさん)の自分に対する仲間たちの態度に、自分の存在を示したいと同時にモヤモヤした物を抱えた心の隙に付け込まれ、渡された楽譜をそうとは知らずに演奏したことで、崩れ壊れかけた絆の力を取り戻し、復活したギルファー(當間ローズさん)を倒したのもまた、人を信じ、仲間を信じ思いやる心と絆。
テオ(古畑恵介さん)の『あなたは、やれば出来る子なんです。』という言葉によって、自信に目覚めるルーカス(松岡卓弥さん)。この言葉は、幼い頃何一つ自信を持つ事の出来なかった私に母がかけ続けてくれた懐かしくも私の糧になった言葉でもあった。人は、誰か一人でも自分を認め、必要とする人が居たら強くなれるし、生きて行ける。古畑恵介さんのテオは、母のような愛で仲間を包み込み護る。古畑恵介さんは、舞台上での所作と動きがとても綺麗で素敵だった。
REONさんのクロエの心に生じたモヤモヤは、きっと生きていれば、誰もが一度は覚える気持ちだと思うし、それは、裏を返せば、仲間を思うあまりに時に厳しくなり、もう少し柔らかく、素直に接したいと思っても出来ない不器用さと生真面目さは、クロエの仲間への愛情の強さであり、そんなクロエに私は熱い心と温かさを感じた。
ギルファーの部下でありながら、ギルファー一味に捕らえられたアイリ(佐々木七海さん)を助けたオズワルド(吉岡佑さん)は、実はアイリと生き別れた兄妹もしくは、アイリと関わりのある者だったのではないかと思った。若しくは、自分の中にある優しい心、その心を封印しなくてはならなかった悲しみ、優しい心、平和を求め、人の心の温かさに焦がれながら、善の世界には戻れない自分、せめて、純粋で優しく温かな心を持ったアイリにはそのままでいて欲しいから守ったのではなかったか。
當間ローズさんのギルファーは、佇まいと、横顔の眼差しに凄みがあり、殺陣が美しく迫力があった。ギルファーもまた、悪に生きざるを得なかった葛藤を抱えていたのかも知れない。ギルファーを作ったのは、人間の憎しみや嫉妬、醜い心だったのかも知れず、それは、私たちの中にも常に潜んでいるものであり、闇に落ちるか、光の中に佇むのかは、己の心根ひとつということなのだろう。
明音さんと中野亜紀さんのダンスも、この舞台を観ようと思った楽しみの一つでもあって、やはり、その表情や踊りの美しさとカッコ良さに釘付けになった。
出演されている役者さん、アンサンブル、ダンサー全ての人について書きたいが、書き切れないのが申し訳ない程、胸にグッとくる、ダンスあり、歌あり、殺陣あり、笑いのスパイスあり、涙あり、そして何より格好良くて、夏にピッタリの爽快で、素敵なエンターテインメント溢れる舞台だった。
文:麻美 雪