美しく青く 公演情報 Bunkamura「美しく青く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    赤堀新作戯曲inコクーンは何作目になるか(調べりゃ判るが)、年々こなれて来たように感じるのは「見慣れた」せいもあるかも知れない。きわどい人間像を炙り出しながらそれを包摂していく世界観が赤堀作品の一つの特徴で、ピンポイントなシチュエーション描写がツボだ。今回は「8年前」という台詞が仄めかす東北の、猿害に悩んでいるというから農業人口が一定数あるどこか。農業が生業でない主人公の住まいはマンションの一室のようであり、彼と同世代(アラフォー)や20代の若者が自警団を構成してもいる。主人公夫婦と妻の実母、自警団に同道している役所の男、飲み屋のママ、そこで働く地元の若い女性、農業を引退した頑固老人等等が個性的かつ普遍的な人間像を見せ、典型的でない言動の背後に今この瞬間を浮かび上らせていた。
    五場面の大転換も何気に美味しい。

    ネタバレBOX

    地方の描写としては、限定させる要素を除き、やや引いた視線での描写に止めていた(毎回の事だが)。原発事故の影もあるが言明されず前面には出てこない。
    だが主人公がリーダーとしてのめりこむ自警団が彼にとって何であるのか、というあたりに「地方」の病理を匂わせ、そこから「逃げるのだ」と東京に出ていく若い娘に言わせる窮状は、ひとり「猿」のみに由来せず、全体的な厳しい状況が彼らの生活を侵食している事を想像させる。工事半ばの「海が見えなくなる」防潮堤の高さも異形で痛々しいが、作者は客観的な「窮状」をそれ以上際立たせず、人間同士の間に生じたものを人間同士の力(自然治癒力?)で乗り越える風景を切り取っていた。
    だが痛々しさは現実を言い当てており、リアルに裏づけられた光景として脳に像を残した。

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    2019/07/25 07:34

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