熱海殺人事件~モンテカルロ・イリュージョン~ 公演情報 劇団SOFT GEAR「熱海殺人事件~モンテカルロ・イリュージョン~」の観てきた!クチコミとコメント

  •  とにかく、これを上演して下さって有難う、と最初に言いたいです。

     つかさんの「熱海殺人事件」には様々なバージョンがあるのですが、私が観たのは基本的に(その都度脚色されて枝葉末節が変わってたりするので)2バージョン位です。 この「モンテカルロ・イリュージョン」は噂には聞いていたけれど、観劇する事能わず、今に至っておりました。
     ですから、この作品を観れた事自体、奇跡の様で感謝しかありません。 流石ソフトギア、私のツボを心得ていらっしゃる。ホント、有難うございました。

     でもまぁ・・・手強かったですね。 “ ま、基本のところは「熱海」だから・・・ ”と、のほほんと構えてたら・・・え?殺人事件がひい~ふう~みっ・・・つ?
     展開は特有のハイペース&フェイク&ぶっ飛び。 いやソレ無理だろう?というツッコミは無意味。 私の拙い左脳は情報処理・・・しきれなかった。 結局幾つもの“ ? ”を残して終わってしまいました。
     ま、「熱海」だから・・・あんまし深く悩むの止めよう・・・。

    ネタバレBOX

     以下は、あくまできやまの個人的な考えです。 失礼な点があれば苦笑いして許して下さい。

     最初、「熱海」を演るって聞いた時、「え?こんなメジャーで、岡山でもいろんなトコが上演してる脚本を?」と、正直首を傾げました。 もっとマイナーでコアな作品を紹介してくるだろうと勘ぐってたから。 それに、2002年に脳みそ50ccが上演した「熱海殺人事件」での、赤木さんの木村伝兵衛とロドリゲスさんの大山金太郎が強烈に記憶に残っているから、再演に近いものになるんじゃないか・・・と。

     観てみてナットク、これは2019年、現在の「ソフトギア」にしか演れない「熱海」なのだ。
     様々なバージョンは有れど、熱海のキャラクターは「パターン」が決まっている。 言わばRPGの役割の様に。 部長刑事は俺様キャラ、新人刑事はちょいヒネ熱血、水野さんは山口アイ子と二役で何でもアリのヒロイン、大山金太郎はお笑いを装った悪役・・・。
     だけど彼等は演じる俳優によって観客が受ける印象が全然変わってしまう。 当たり前といえば当たり前の事だけど、役者一人一人の個性が色濃く光るソフトギアだからこそ、面白いキャラクター達に仕上がっている。 客演さんも含めて、あぁ~ソフトギアだぁ・・・。

     ベタな言い方ですが、「熱海」は“ 怒り ”と“ 愛 ”で出来上がっているお話だと思うのです。
     二つは表裏一体というか、ねじけて入れ替わったり、ずーっと繋がっていってたり。 そうして起こったのが、三つの殺人事件(いや、正確には・・・かな)。 解き明かしていくにつれ、無茶振りとも思える動機も展開も、実はとても哀しくやりきれないものだったりするのです。

     それが最も強烈だったのが、木村伝兵衛役の小橋ミミさん。
     阿部寛が演じて話題になったバイセクシャルの部長刑事役。 ダンサーのしての筋肉と動きを身につけたミミさんが、「美しい」という台詞を恥ずかしげもなく受け止めるに、最も相応しいキャスティングでしょうね。
     ただ、ミミさんは阿部寛ではありません。 当たり前ですが。 だから、小橋伝兵衛には毒気も狂気も希薄。 だけど、ラストシーンでの独白で真実を吐露しつつも、冤罪を受け入れて愛に殉じようとする、哀しいまでの純粋さに胸を締め付けられる。 この人はずっとずっと、この悲しみを孕み続けてきたのだ、と。 そして今なお、失った恋人を想い続けているのだと。
     彼が越えたかった棒高跳びのバーの高さは「ベルリンの壁」の高さとも言われていたけれど、それは「あらゆる障壁」を暗喩しているのだろう。 男性と女性、LGBTと健常者、狂人と正常者、犯罪者と無実者―――物語の最後速水の語りで、彼は「壁」を越えて自由に解放された。 ただそれがこの世とあの世の壁さえも超えた結果なのだとしたら、やはりチト悲しい・・・。
     ついでに、欲を言えばチャイナドレスも見たかったな~~~。 まぁでも、あのシースルーシャツは犯罪!だったから許す(フフ腐・・・)。

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    2019/07/09 02:37

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