MITUBATU 公演情報 なかないで、毒きのこちゃん「MITUBATU」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    何だこの面白さ味わい深さは…すぐに思い出せず悶々としたが、ハッと気が付いた。これはシェイクスピアの「マクベス」ではないか。
    物語は、お下劣な場面もあるが、最後は有名な映画音楽で追憶を誘い、そして清々しい印象を残す。これってこの劇団「なかないで、毒きのこちゃん」のイメージだっけ?
    今までに観た「こんにちわ、さようなら、またあしたけいこちゃん。」「おれたちにあすはないっすネ」、そして今回の公演、実にバリエーションがあり...。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    いつの日か、または異次元の下北沢にある廃劇場という設定。上手側はブルーシートで覆われ、メイン舞台は、ダンボールが重なり、下手側に木箱を重ね合わせたようなベットが置かれている。中央にはドンジャラの卓と牌。全体が廃墟といった雑然とした雰囲気を漂わす。また車の運転シーンを表すため客席後方の一部を使用する。

    物語は、色々なキャラの人(スリ、生肉大好き、人殺し、出張デリヘル嬢など)がこの廃墟のような所に出入りしている。取り留めもない日常、そんな暮らしにさざ波が立つ出来事が。ここに住んでいる け太郎(政岡泰志サン)のところに娘とその夫が一緒に暮らそうと誘いに来て、皆、祝福と一抹の寂しさといった複雑な気持が溢れ出す。

    奇妙な設定(廃墟・生肉からの想像)や奇抜な外見(例えば け太郎はおむつ姿)を除けば、中盤から殺人犯の逃亡先とそこを突き止めようとする警察、その刑事ドラマの概観を示す。この緩いストーリー性をベースに、奇妙な空間で暮らす人々のペーソスを織り込み、それを外見やオーバーアクションで笑いに包み、色んな味わいを感じさせる逸作。
    この一見貧しき吹き溜まりのような場所も、脛に傷持つ人にとっては安住の地かもしれない。また出張デリヘル嬢・ちゃん(未来サン)の仕事とは別の、人柄-優しさ思い遣り-への思いを「きれいは汚い、汚いはきれい」と叫び、思いの丈を打ち明けるシーンは公演の真骨頂ではあるまいか。

    この台詞、シェイクスピアの『マクベス』の「きれいは汚い、汚いはきれい」(邦訳)にあり、神様や善人にとっては美しくきれいなものも、悪魔や悪人にとってはかえって忌々しく醜い存在で、反対に、善な人々にとっては忌み嫌うべき汚らわしい悪徳が、悪な人々にとってはきれいな美徳として喜ばれる。このオクシモロン的な言葉、正しさは一つではない。人が持つ、または感じる気持は機械などと違って理屈や理論通りにならない矛盾が人間らしい面白さかも...。まさに公演そのもの。

    この公演は喜劇だと思うけれど...男が女装して、しかも出産もするという冒頭のシーンはあれもこれもありという矛盾した世界観を示す。しかしラスト音楽「スタンド・バイ・ミー」は追憶を誘うと同時に、この物語に関連(秘密小屋へ集まり、タバコ、トランプ、特有の仲間意識など)付けるという巧みさ。そして祝祭性のある喜劇とは趣を違える結末と冒頭シーンへの帰結は見事。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/07/05 23:42

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