カテゴリーボックス:Re/描かれたテーブル:Re 公演情報 9-States「カテゴリーボックス:Re/描かれたテーブル:Re」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    生きていく術に潜む優しき狂気のようなものが描かれた逸作。それを会社という組織の権力争いを通して浮き彫りにしていく展開は、分かり易く納得性もある。偽りと孤独は人の本質を突くのであろうか?
    (上演時間1時間45分) 【描かれたテーブル:Re】

    ネタバレBOX

    この劇場は2方向から観劇できる。自分は出入口から左側の客席へ。その方向から見たセットは、白黒の市松模様ような床に丸テーブルと椅子、やや下手にソファーが置かれ、奥まった所にサークルフェンス。このエリア内は鳴海家具という会社のデザイン部という設定であり、外周を廊下等に見立てている。何となくセンスの良い調度品が配置されているような雰囲気だ。

    梗概…カリスマ経営者であった先代社長が亡くなり、兄・妹がそれぞれ社長・副社長に就任したが、経営方針の違いという名目に隠された家族間の確執が会社を危うくしている。物語は会社の存続を左右する家具のデザインを担当する部署にいる人々と会社経営陣の思惑を絡めて展開する。もっとも表層的には勧善懲悪的な感じで分かり易い。
    主人公の渋谷優香(坂本未緒サン)はデザイン部の新人社員。彼女が信頼している先輩社員でデザイン部のエース、しかも兄の友人が、実は兄を自殺に追い込んだ人物であると知った時の驚きと怒り...それまで内気で本心を言わない彼女が豹変した態度に偽善人の姿を見ることが出来る。
    亡くなった兄との夢想シーンで人を赦すことを仄めかしていたが、何となく違和感を覚えていた。しかし、土下座して謝る先輩を亡くなった兄と生きている妹が見下ろすラストシーンにリアリティを覚える自分は心狭き人間だろうか、と考えてしまう。

    他人には寛容を求めるが、自分は相手の理不尽な行為を許さない。そんな本音を隠して暮らしているうちに、自分の本心はどこにあるのか、それさえも見失って偽りの気持ちがいつの間にか本心と刷り込まれ、すり替わってしまう。憤り、怒り、失望など負の感情を押さえ付け、偽りの優しさで相手に接する。それは自分自身の醜さを表さず”大人の対応”という甘美な言葉に飲み込まれ、自分の器の大きさを誇示する自己満足そのもの。人は誰しも他人には良く思われたい、出来れば敵を作りたくないという一種の保身が働く。そのうち正面から向き合わない、もしくは本音を言わない表面的な付き合い。個々人が持つ外面似菩薩内心如夜叉のような心持を中心に描きながら、それを会社の経営方針、そこに潜む権力争いになると本心剥き出しの感情が溢れ出す。兄と妹の確執が今一つ伝わらないような。それでも見えない”心”の機微を社会的な関心事を絡めることによって浮き彫りにさせる脚本、その演出は見事。

    脚本・演出は素晴らしかったが、キャストの演技力に少し差があってバランスを欠いていたように見えたのが残念なところ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/06/29 19:14

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