THE NUMBER 公演情報 演劇企画集団THE・ガジラ「THE NUMBER」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/06/19 (水) 19:00

    導入部分が判りにくいので、入り口が見つからずに周囲をうろうろする感じ。
    だが一旦入り込めば、途切れない緊張感と迫力が素晴らしい。
    自由と引き換えに「幸福」を手にしたはずの集団「われら」の中に
    少しずつ疑問を抱くものが現れ、周囲に影響を及ぼしていく。
    その葛藤と疑心暗鬼が強い緊張感を呼ぶ。
    田村真帆さん、ステージごとに疲労困憊じゃないかというほどの熱演。
    緩急自在の千葉哲也さん、およそ管理社会に不似合いな
    得体のしれない男にドンピシャでハマりすぎ。
    コントロールしようとすればするほど、本能は頭をもたげるものだ。

    ネタバレBOX

    客席に入ると、舞台上、既に一人の女性が椅子に座っている。
    目隠しをされ、長い鎖に繋がれているその手には1冊の手帳。
    この手帳に書かれた内容、つまりこの女性が見聞きした事実が
    これから再現されるのだ。
    200年戦争で人類の大半が死滅した世界、優勢遺伝子のみを残すため
    グリーンウォールと呼ばれる壁で囲った世界で生きる人々。
    ナンバーで呼ばれ、ホルモン注射で老いを知らず、体外受精で子孫を作る。
    そしてこの女性D503は、ジャッジメントと呼ばれる裁判の判決を待っている。
    壁の外にいる“古代人”と同じように“本能”に従って行動した罪で・・・。

    もう1000年も壁の内側で生き続ける管理社会の人々。
    安全と進化を優先した管理社会では「個」は罪であり、反論する者は排除される。
    インテグラルと呼ばれる管理システムとその中枢は神の如く絶対だ。
    モニターをOFFにすれば大丈夫と信じて本音をさらけ出していたのに、
    実はOFFにしてもインテグラルに筒抜けだったという衝撃は、
    そのまま当局が“古代人の本能”をいかに恐れているかを物語る。

    信頼と裏切り、進化と古代人、そして「自由」と「幸福」。
    共存できないもの同士がせめぎ合う様は緊張の連続だった。
    D503(科学局)役の田村真帆さん、緊張と警戒心でいっぱいの台詞が
    この社会の息苦しさを体現している。
    S4711(幸福局)役の岩野未知さん、柔らかさとしたたかさを併せ持つ
    一筋縄ではいかないタイプを魅力的に演じている。
    そしてI330(宇宙局)役の千葉哲也さん、本心はともかく
    本能的にサバイバルしながら生き抜く強烈な男が印象的。

    「原子レベルから消滅」か、「両眼を失って老いて行く」か、
    私ならどちらの罰を選ぶだろう?

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    2019/06/20 00:14

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