キネマと恋人 公演情報 世田谷パブリックシアター「キネマと恋人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    廣い客層が楽しめるファンタジーだ。
    トラムの再演だが、初演はチケットが手に入らなかった。今回は広い世田パブ。幸いいい席が手に入って、ケラならではのエンタティンメントを3時間半楽しんだ。
    ストーリーを取っているのはウッディ・アレンの映画「カイロの紫のバラ」、東海岸の田舎町の話を日本の離れ島の街に移した。べたの東北弁にしているが、想定される規模の島の街が思いつかない。時代もどうやら戦前らしい。架空のファンタジーである設定は強調されている。映画では主演のミア・ファロー(絶品の名演)を追ったストーリーになっているが、こちらは、緒川たまきと、ともさかりえの姉妹を軸にしている。時間もほぼ倍になっていて,原映画のエピソードは殆ど取り入れられているが、見事な換骨奪胎で、ケラならではの舞台作品になっている。日本は映画も演劇も、能・歌舞伎がありながらこういう世界は苦手なのだ。
    何よりいいところは、映画の作中人物の脇役俳優が上映中の映画を抜け出して、映画が生きがいの貧しいファンの前に現れるという荒唐無稽の話を、花も実もあるエンタテイメントに仕上げたことで、こういう作品はなかなか現れない。ケラのステージングのうまさはいまさら言うまでもないが、それを支える美術(二村周作)、衣装(伊藤佐智子。色使いは中間色が多く、洒落ていて品がいい)、音楽の編曲、振付(小野寺修二)、みな気合いが入っていて完成度が高い。
    映像の中とナマの芝居のつなぎも、いかにもアナログ風なのが却って効果を上げていて面白い。上田大樹らしい劇場映像だ。
    俳優は、ケラの芝居の常連が多く出演していて、世界を作っていく。緒川たまきは、ガラとしては都会的だが、長い手足を生かして東北弁のセリフをしゃべっていると、この芝居ならではのキャラクターの味わいが出てくる。ミア・ファローとは違う女優の魅力だ。そこがファンタジーの不思議さでもある。妻夫木聡は、難しい役どころを軽々とやっている。この軽々と見えるというところがこの芝居のキモで、うまい。ともさかりえはしっかり脇を固めて最後のシーンで見せる。ここで原作からケラが動かした狙いも見えてくるのだが、そこまで引き絞っている深謀は見上げたものだ。それぞれのキャラが面白いのがケラの芝居で、今回も遺憾なくその特色が発揮されている。いささか迷いが見えたのは三上市郎の暴君的な亭主くらいだ。
    幅広い観客が入って、満席。これでS席¥7,800は最近の料金では超格安だろう。公共劇場の最近のヒットである。

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    2019/06/19 00:10

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