チューボー ~SECOND HOUSE Ver~ 公演情報 SECOND HOUSE「チューボー ~SECOND HOUSE Ver~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    夢と仕事の在り方を問う...何もかもが中途半端な(中年)男がもがき苦しみながら人生再出発に向けて頑張る姿を描いた物語。この公演の謳い文句は、池袋演劇祭優秀賞受賞(2012年)作をミュージカル仕立てで再演ということであったが、どちらかと言えば劇中歌といった感じだ。冒頭こそ、韓国のNANTA(ノンバーバルパフォーマンス)を思わせる調理器具等を利用した音楽を披露し、ミュージカル風にしていたが…少し物足りない。

    タイトルは「チューボー ~SECOND HOUSE Ver~」であるから、厨房の中から見た世間、一方厨房の外から覗いた料理の世界...その双方向が楽しめる公演は観応えがあった。
    (上演時間2時間) 【Aチーム】

    ネタバレBOX

    セットは中央に大きなデシャップと後壁に棚、上手側は外に通じる出入口、手洗い場。下手側には洗い場と更衣室への出入口があり、全体的に厨房のイメージを持たせる。初演時とはデシャップの位置が違うが、劇場舞台の構造・スペースの関係であのような作りになったのだろう。

    梗概…主人公・山辺は、親から受け継いだ店を潰し自暴自棄になっている。以降どこで働いても長続きせず、ハローワークの紹介でこの有名なイタリア料理店にやってきた。自分は長年(中学卒業以降)料理に携わってきたという自負があり、その自分が洗い場担当になることに耐えられない。しかし妻と子のために働き借金を返済しなければという強い責任感、それは別の強迫観念にもなっている。劇中にたびたび表われる、また”アイツがやってくる”という台詞に込められた慄きこそが、自分自身の弱さであり強迫観念の元凶。この店で働くことで徐々に自信を取り戻すが、この店も...。

    さて、何故この有名な料理店で働くことができたのか。それは安い時給であり、他の従業員も同様のようである。劇中、アベノミクスという台詞が飛び出し、現在の経済政策・景気対策に対する批判がチラリ。飲食業界に詳しくないため、時給が劇中で示された金額であるかどうかは分からないが、それでも料理に携わった仕事をしたい。そこにこの劇のテーマが観えてくる。夢があるからそれに向かって頑張る、働くことで夢を適えるという相互に密接の関係を料理を介在して伝える。

    同時に食は生の根源であり、この店では美味しい料理をリーズナブルな値段で提供する。一方きれいごとでは済まされない現実、そこに経営という壁が立ちはだかる。オーナーシェフ・高林は料理の腕は一流であるが経営には疎いようだ。そこで経営コンサルタント契約をし店の経営再建に努めるが、その甲斐も空しく店は潰れる。コンサルタント曰く、強い意志・信念が重要であると。もう1つのテーマは自分自身の在り方を問う。主人公もこの店のオーナーも仕事に対する自信のようなものが揺らいだ結果、自滅していく。

    主人公は中学卒業以来、両親の下で毎日同じことの繰り返しの仕事をしている。両親が亡くなり店を継いだ時、いづれ自分も両親のように暮らし死ぬ。そう思った時、仕事に対する疑問、一生続けていくことへの不安が芽生える。店が潰れたのは近くにできたファミレスの影響ではなく、自分自身がダメになったから店が潰れた。家族を思う気持ちの強さが逆に自分を苦しめる。本音を言えない、一方妻の側からすれば夫は何を考えているのか分からない。それぞれの思いの葛藤、それを激白する場面は圧巻である。その夫婦間の仲立ちをする子、まさに子は鎹(かすがい)を思わせる子役の演技。

    冒頭、敢えてデシャップ台に置いたカバンは、仕事(夢)に対する不誠実な姿勢、それが中盤あたりに調理を任されるようになるとサロンの結び(締め)方で仕事への真摯な姿勢に変化を観せる、そんな細かい演出も好い。飲食業界に限らず、仕事に対する生き甲斐、遣り甲斐を感じた時に人は喜びを感じる。夢、仕事、そして家庭という身近な中にある、何の変哲もない暮らしの中にある幸せをしっかり描いた好公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/06/13 00:03

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