Other People’s Money 公演情報 劇団昴「Other People’s Money」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/06/06 (木) 19:00

    フライヤーにあるドーナッツて何?
    と思っていたら、これは牧歌的な田舎町に、ダンキンドーナッツやミスタードーナツといった全国展開をしている巨大資本がが入ってきて、地元の小売店の素朴なドーナツを駆逐するという意味であり、ガーフィンクルの好物として「おいしいものは、おなかが一杯でもおいしいのさ」と言わせる対象なのだね。だから、ドーナッツはこの舞台において捨てられたり、お飾りにされたり、投げつけられたり、デスクの引き出しに隠蔽されたり、少しづつ周りに分け与えられたりする。

    金融経済を表現した古今の対比・対立を描いた舞台なので、株式や敵対的買収とその対策について、専門的な用語が飛び交う。しかし、それは、舞台上の人物たちが、今、企業乗っ取りで戦っているという構造を示すデコレーションに過ぎない。
    描かれているのは、欲望とは何か?ということだろう。その対象が、金だということだ。

    登場人物全てが、金に執着しているわけではない。ただ、金を通じて何かに強い執着を持っている。愛情、安寧、自己の過去など。

    ニューヨークとニューイングランド、それぞれのデスクを結ぶ舞台上の導線の作りは、シンプルに整理され、時として電話でのやりとりも、この2つの都市間の距離を明瞭に表していた。こうした舞台の作りが、ともすれば、金融用語に翻弄されてしまいそうな会話劇を、落ち着いて見せてくれる。

    タイトルの「他人の金」、わざわざ「Other People’s Money」と記載する必要があった理由は、1幕の最後で判ります。

    ネタバレBOX

    ラストの株主総会、ジョーゲンソン、ガーフィンクルの役員入れ替え投票に向けての演説は、観客を株主に見立てての迫真の演技。株主の心を見抜くように、観客の視線を探っていく。

    ジョーゲンソンの死後に、ビーが彼の人生を評して言う「唯一の汚点は、2年だけ長生きしたこと」(違ったかな)、ビルのその後の人生の独白、そして、ガーフィンクルとケートの結婚、悲哀と皮肉に満ちていて、不思議な余韻を残す。日本では、こんな芝居(あるいは結末)は、まだまだ描けないなあ。アメリカ演劇の乾いた感じが、ここでも感じられた。

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    2019/06/07 14:24

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