ONとOFFのセレナーデ 公演情報 ことのはbox「ONとOFFのセレナーデ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/06/06 (木) 19:00

    チャットの会話のテンポと、テーマのある種“薄暗さ”が実に好対照。
    次第に明らかになる「ヤリタイ」の仕事、そして彼のキャラの意外な激変。
    切なく下世話なONとOFFのバランスの上に
    自分も立っているのだと考えさせられた。
    最後に役者が挨拶を終えて舞台を降りる時まで、物語は続いていた・・・。

    ネタバレBOX

    下手側、ひとりの男が、デスクのパソコンモニターに向かっている。
    舞台正面には二つの窓。
    チャットの相手が二人、こちらを向いてキーボードを打っている。
    暗闇の中、3人だけが浮かび上がって
    カタカタという軽く切れの良いキーボードの音、
    打っている内容が台詞になってポンポンと会話が弾む。
    今度オフ会で初めて会おうという計画を立てる3人。
    最近参加してこない「シタイ」がオフ会に来るかどうかを気にしている。
    ここは、デスクに向かっている男、ハンドルネーム「ヤリタイ」の職場。
    彼は、病院と契約している葬儀社のスタッフとして院内の一室で待機している。
    次に死にそうなのは誰か、リストを見ながらただ待ち続ける。
    だがよりによってオフ会の日、葬儀が入り「ヤリタイ」は会場に向かう。
    そこで彼が目にした光景は・・・。

    オノ・ヨーコの歌の歌詞がヒントになるミステリー仕立ての展開が巧い。
    次第に明らかになる緊張感と、差し込まれるチャットの軽やかさが対照的。
    ちょっと他人のプライバシーに踏み込み過ぎるキライはあるが
    知りたがり屋の本性を隠さず行動すればこういう事か、とも思う。

    「ヤリタイ」のクールで人間関係に距離感を置くキャラ、
    「人の死」が利益をもたらすことに対する後ろ暗さも感じるが
    並行してマージンのための交渉を持ちかけるしたたかさもある。
    それらとチャットでの明るく率直な一面とのギャップがとても面白い。
    ここには、ひとの心の二面性、現実と仮想空間、表と裏、生と死、
    全てのものが背中合わせに共存する、私たちの日常が描かれている。

    観ている私も、「ヤリタイ」のバックグラウンドが明らかになるにつれて
    彼の思考に近づいて行くのが不思議だ。
    ただラスト、「ヤリタイ」の選択の急激な転換には若干“力技感”を覚えた。
    だからと言ってどうすればいいのかはわからないけれど。

    「ヤリタイ」と「シタイ」の舞台挨拶後のハケ方が心に残る。


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    2019/06/07 01:36

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