シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ! 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    地点ならではのパフォーマンスである。演劇ともダンスとも朗読とも芝居とも言えない。どれかのジャンルの上に総合しようという方向があるわけでもなく、このテキストはこう表現する、という演出の意志に貫かれている。よって、地点は地点、としか言いようがない。
    廣いKAATの中スタジオ。一方に150席ほどの階段席が組まれている。席に向かって奥に、雪を思わせる霞のかかった大きな鏡。これが照明によってさまざまに表情を変える。舞台七三に天井から僅かに葉を付けた白樺の木がさかさまに吊るされている。その前、客席の前に、正方形の金属製の枠。上には悪路を思わせるようにバラバラに長い板が置かている。天井に着くように白い風船が五つあがっている。風船はもう一つ俳優の一人安倍総子の首にもついている。
    そのほかの広いスペースを、俳優六人が、「まるで」としか言いようがないが、馬がギャロップを踏むように、走り回りながら、ときにはシベリアの悪路を走る馬車になったり、それに乗ったチェーホフになったり、さまざまな役を担って(つまり、せりふは斉唱になったり、ひとりで読んだりする)チェーホフの「シベリア紀行」を読んでいく。ほとんど動きを止めることなく、馬の走りをしながら、地点語、とも言われる重複や、濁音を多用したテキストを台詞にする。発声訓練が行き届いていて、その台詞が全部観客に届く。台詞の流れは、ときに掛け声や、馬のいななき、鞭音などをリズミカルに取り入れ、馬車の進みにも似て、紀行文に合う。
    で、この異色の新趣向の舞台は面白いのか。これが、面白いのである。馬たちと共にシベリアの僻地を文明から逃れるように旅をしたチェーホフの気分がよく表現されている。十九世紀の後半にはこういう自然のなかへ!という運動もあったようで、日本でも、明治の末から昭和初期、シベリアや南洋は人気があった。いまの時代の空気に似ているところがあるのかもしれない。紀行文をテキストにするパフォーマンスとしては大成功だろう。1時間20分。初日からほぼ満席。

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    2019/05/28 23:16

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