佐倉義民伝 公演情報 劇団前進座「佐倉義民伝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    重い年貢にあえぐ佐倉389村の農民たちを救うため、将軍への直訴を決意した木内宗五郎。身を捨てて宗五郎を助けた甚兵衛の渡しの場と、死罪を覚悟して妻子と別れる「子別れの場面」が見どころと言われている。今回初めて見たが、渡しの場の甚兵衛の活躍はあまりに一瞬で、感動する暇がなかった。「子別れの場」はセリフとしては簡単至極、いわばとんとん拍子に心が通じていき、「あれっ」と思ったが、家を宗五郎が出た後、追いすがる子供と、それを振り離す宗五郎の「所作」がみどころとわかった。
    今回、一番の物語の肝になったのは、51年ぶりに演じたという「光然祈念の場」。いたいけな子供たちが、宗五郎夫妻の前で首を切られた様子を語るセリフに、客席でも一番忍び泣きが聞かれた。

    現代劇のように親子のつらい別れに感情移入することはできなかったが、いいものを見たという心地よさは長く残った。それはなぜかと考えると、日常生活とは別世界の体験に、心が浄化されたのではないかと思う。あるいは様式的な舞台の「美」にふれた効果だろう。加藤周一が「見るなら古典劇。伝統なき現代劇は見てもつまらない」という趣旨のことを言っていたのは、この「美」があるかどうかの違いではなかったろうか。

    ネタバレBOX

    子別れは大雪の冬。その後の将軍への直訴は紅葉の寛永寺。1年近くたったことになるが、つらい別れの後、年貢問題を脇においたまま1年潜伏か何かしたとは考えにくい。しかも、最後の場面はサクラサク春で、子別れから1年半たったことになるが、乳飲み子だった三之助は乳飲み子のまま。(季節の通りならもう2歳だろう)直訴場面をもみじの美で華やかに見せるための季節の設定と思うが、ストーリーとはずれる。季節のちぐはぐについて、製作側はどう考えているのだろうか?

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    2019/05/19 19:39

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