満足度★★★★★
つかこうへい(1948/4/24-2010/7/10)が1994年に発表した長編小説を岡村俊一が今回初めて舞台化したもの。ストーリーはCoRichの説明にあるように荒唐無稽なものであり、どこまで本気か分からない女優論もあれば2011年を予見していたような原発論もあって一度観たくらいでは頭の整理が追いつかない。
恐ろしいほどのスピードで突進するグルーブ感は先週観た「熱海殺人事件」以上だと感じた。あちらは味方伝兵衛一人のパワーが頼みだが、こちらは主要人物に負荷が分散されているので全力を出し切ったところで交代して常に元気な役者が舞台上で飛ばしまくることになる。
今回の大注目は、アイドルグループ、℃-ute(キュート)のリーダーであった矢島舞美さんである。すでに舞台で主役をいくつも経験しているのだが、この作品は異次元の困難があっただろう。オープニングの紹介はチラ見せで、その後の登場シーンでもやや控え目であったが、尻上がりに調子を上げ、後半は力強いセリフをガンガン飛ばす完全な舞台女優であった。元より美しさは抜群であって本当に「華のある」女優さんだと感じた。初日に力を出し切った安堵のためか、カーテンコールではすっかり普通の若い女性に戻っていて、「つかこうへいさんの誕生日にこの舞台に立たせていただいて……」と言うときには感極まって言葉を詰まらせていた。
と書いたけれどその素晴らしい矢島さんが目立っていたなんてことは全然なくて、先週に続いての出演の味方良介、石田明、久保田創の皆さんも、木﨑ゆりあ(元AKB48)、佐久本宝、松本利夫(Exile)の皆さんも絶好調であった。これは絶対のお勧め。私も帰宅すると残り少ないチケットを一枚買ったのだった(その後数時間で全公演完売!)。
*「小説熱海殺人事件」(角川文庫)はこの会場でも引き続き売っていた。