満足度★★★★
鑑賞日2019/04/15 (月) 16:30
座席3階4列37番
価格6,000円
夜の部を拝見。
個人的に、歌舞伎で「今観なければいけない役者」は片岡仁左衛門(ともう一人、坂東玉三郎)、「今観るべき役者」は市川猿之助だと思っています。(好みですよ)
そこで、当然にこちらをチョイス。
「実盛物語」
主演は片岡仁左衛門の実盛というより、寺嶋しのぶの息子、寺嶋眞秀の太郎吉。冒頭、斬られた手首に握られた源氏の旗を取り上げるところから、終幕に実盛と共に馬に跨る場面まで、とにかく見せ所を全て持って行きます。そこは仁左衛門、うまく彼を引き立てて楽しく芝居をさせることに腐心の様子。そこが微笑ましい。
そうなると、舞台の内容云々ではないですね。
ただ、太郎吉が母の敵として実盛に決闘を申し込み、それに対して成人になったら受けてやるという実盛とのやり取り、これが何度も繰り返されるのは、ちょっとしつこい。このあたりは古典といえども、すっきりさせてもよいのだとおもうけれど。
なお、太郎吉くん、母親の手首を持ち歩いたり、実の祖父の首を斬り落としたり、まあ大変なトラウマ背負っているにも拘らず、ひたすら明るいなあ。
「黒塚」
陰影、照明、舞台装置と見事。
鬼とは、鬼として生まれてくるのではなく、人が鬼になるのだ、という鬼の在り方を忠実に表現し、その鬼の悲しさを淡々と表現する猿之助の演技が素晴らしい。
錦之助の阿闍梨も、尊厳のある振る舞いで、鬼女の悲しみを一層引き立てている。
「二人夕霧」
主人公は、鴈治郎演じる伊左衛門。熱愛の上結ばれるはずだった恋人(夕霧)が亡くなり、しばらくして女房になったのが二代目の夕霧。しかし、先代の夕霧は生きていて伊左衛門に会いに来て、という話。
この伊左衛門のダメ男振りが楽しい。それでも2人の美人に迫られている男振りがうらやましい。通常の舞台だったら、往年の森繁久彌なんかがやるとはまり役なんだろうなあ。でも、こうした役ができる役者って、歌舞伎界を除くと今いないなあ。同じ古典芸能でも、野村萬斎とかだと、ちょっと硬いものなあ。そういう意味では、歌舞伎界というのは凄いなあ。故勘三郎とか、仁左衛門、猿之助でもはまりそうだもの。
日本酒をちびちび飲みながら、おばんざいでもつまみながら観たい作品。
ただ、この演目の時には、私の周囲ではすでに帰っちゃった方が多くいて、もったいない。