「かくも碧き海、風のように」 公演情報 椿組「「かくも碧き海、風のように」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    賑やかな椿組春公演だが、内容は暗い。昭和11年から20年までに青春期を送った学生や演劇人の青春譜なのだが、この時期彼らにとっては非常に不幸な時代である。
    戦後新劇が散々描いてきた時代と人々で、人物像は近いところでは、宮本研、斉藤憐、少し古くは森本薫や木下順二で見てきた人物たちだ。しかし彼らが実体験に基づいて書くところが、この座組みにとっては、調べて考証したうえでの時代劇だろう。そういう時代になったと言う事には感慨がある。
    金澤の廻船問屋の息子が、実家の没落で東京に出て、浅草のレビュー団に出会い、同時に左翼学生のバーにも出入りして青春を重ねていく。その生活の方は本当に参考文献通りという定番のものだが、今の人々にとってはこう設定しないと、この時期の青春が実感できないのだろう。この舞台は椿組らしい多くの小劇場のメンバーの参加も得て、華やかに苦い青春時代がつづられる。いいところを挙げれば、軸になるカップルの新人二人・三津谷亮と那須野恵は新鮮でしかも、度胸もあって今後が楽しめそうだ。
    苦言を呈すれば、この時代と今を安易に重ね合わせるのは、最近の流行だが、それで思考停止をしてしまうのはなによりも危険だと思う。今は、当時よりはるかに多様化された社会で、それでこそいろいろな問題が露呈しているのだ。最近、皇太子や退位する天皇の非常に考え抜いた発言の中にそういうニュアンスがある。時代は変わったし、新しいモラルが求められている。


    ネタバレBOX

    公演自体はテンポもよく皆一生懸命で、矢野洋子などという知られざるいい俳優を発見できて好感が持てるのだが、いかんせん、一生懸命調べました、という本の古めかしさが邪魔になる。それを若い人に言うのは酷だとは知っているが、もう少し絞ってものを考えないとこの時代乗り切れないぞ。

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    2019/02/28 23:46

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