あじさい 公演情報 大森カンパニー「あじさい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ■約105分+カーテンコール■
    吉川友さん見たさに観劇。キッカちゃんが出なければ観なかっただろう、この「人情喜劇」シリーズの一作に、乾いた笑いを好む私が満足したのは自分としても意外だった。
    老若男女にわたる劇中人物たちは、大なり小なり己の人生に後ろめたさを感じている人たち。彼ら彼女らが背負い込んでいる個々の悲劇とメインストーリーとが見事に呼応し合った有機的で厚みのある脚本がまず素晴らしい上、“人情”要素と“喜劇”要素の配分も至高。人情要素がふくれあがって喜劇要素が味付け程度にとどまってしまうという凡百の「人情喜劇」の轍を踏むことなく、本作は人情要素と喜劇要素ががっぷり四つに組み合ってすこぶる豊かな劇世界を作り上げている。これは、半期に一度のハイペースで良質なコメディを作り続ける電夏の竹田哲士に脚本を依頼した甲斐があったというもの。
    また、人物造形にも抜かりがなく、ヒロインに向けられる励ましの言葉が十二分な重みと説得力をともなって響いてくるのも、話者の細密に作り込まれたバックボーンから無理なくセリフが生み出されているからだろう。もちろん、セリフが重みをもつ裏には、極限までの言葉の吟味があるのは言うまでもない。
    緩急にとことん配慮することで笑いも涙も自在に生みだす大森演出も秀逸。コント公演「更地」シリーズでしか大森演出に触れてこなかった私は、今回はじめて一本モノを鑑賞し、その演出家としての才気を今さらながら思い知らされた次第。
    キッカちゃんは、普段のぶっとんだキャラクターからは距離のある、落ち着いた大人の女性を凛々しく演じて、なんとも素敵でありました。

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    2019/02/24 01:08

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