朗読劇『罠 Piège pour un homme seul』 公演情報 演劇企画CRANQ「朗読劇『罠 Piège pour un homme seul』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2019/02/06 (水) 19:00

    オリジナルのミステリー舞台を観ると、初回はストーリーの構成や謎解きに関心が行き、ミステリー本来の楽しみに耽溺できるのだけれど、2回目以降の観劇となると、読書と同じようにその伏線を丁寧に拾う楽しみに変わる。特に舞台の場合は、本と違って前のページを読み直すことができないだけに、それを求めて再観劇という方も多いだろう。
    そしてそれ以上に、ミステリー再観劇の楽しみには、役者の演技、演出のオリジナリティー、舞台美術・装置の工夫の違いを楽しむこともある。この点は、読書と大きく異なる点である。

    さて、今回の舞台で気付いたこと。→ネタバレ

    ネタバレBOX

    全体的なトーンについて
    ダニエル、そして偽エリザベートと神父が冒頭からテンション高すぎではないか。
    ダニエルは、エリザベートの家出にかなり神経をすり減らし、失踪捜査をする警部に当たり散らすことから舞台は始まる。しかし、彼女の失踪の理由を一番理解しているはずの彼が、家出後もう何日も経っているのに、あれほど怒声や罵声を揚げ続ける必要があるのか。その後の混乱と猜疑、恐怖によって次第に精神を疲弊させ、衰弱しながらもテンションが上がって自身を失っていく様がこれでは描き切れない。
    偽エリザベートと神父は、早くから悪役丸出し過ぎないか、ダニエルを落とし込めるには、むしろ優しく穏便な言動こそが効果的で、そのトーンが警部を騙し、そして何より観客を騙せると思うのだけれど、警部が来た時点で、もうすでに悪役全開だもの。騙されるも何もあったものではない。

    舞台装置について、
    ラストの水を降らせる演出はよかった。
    最後の謎解きと場面では、役者の立ち位置や言葉遣い、照明の転換などがなされることが多いのだけれど、まさに物理的な転換。エリザーべートの運命をも垣間見せるような
    情景だった。

    朗読劇と日替わり配役について
    朗読劇にしたのは、日替わり配役によるセリフ覚えの軽減なのかな。
    確かに、ミステリーの場合、先の書いたように謎解きの面白さは初回を超えられないのだから、こうした日替わり配役で、楽しみのバリェーションを作るのはよいアイデアかもしれない。ただ、舞台の狭さをそれほど気にする必要もなく、舞台美術にそれほど手間をかけなくてもよいことを考えれば、朗読劇にしない可能性も十分あるのではないだろうか。
    というのも、朗読劇と言いながら、かなり動きが(それも格闘シーンあり)あるので、本が邪魔に見えてしょうがない。初日ということもあろうが、セリフのかみも、セリフを覚えていないということではなく、朗読劇ということで、本に目をやることでセリフのリズムを失していることが原因のように思えてならない。
    特に、全公演、カンタン警部を演じる田中正彦さんにとっては邪魔そのものでしかないだろう。(でも、今回のメンバーで、この役を演じられるのは彼しかいない)

    最後に、メルルーシュ役の利根健太朗さんには拍手。チェンジオブペースに大貢献!

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    2019/02/07 16:39

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