冬のカーニバルシリーズ Mann ist Mann (マン イスト マン) 公演情報 KAAT×まつもと市民芸術館「冬のカーニバルシリーズ Mann ist Mann (マン イスト マン)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/02/01 (金) 14:00

    座席1階2列11番

    S席で観劇。食事つきなのだけれど、歌舞伎観劇で弁当を食べるのとは違い、勝手が判らず、席に落ち着いて食事開始まであたふたあたふたすることしばし。食事は美味しく、魚料理を予約したのだけれど、サーモンとホタテのグリルは予想を超えておりました。サーモンはあまり得意ではないので肉料理にしておけばよかった、と少し悔やんだのですが、サーモンの皮がパリっと香ばしく、ビールとワインで楽しませていただきました。後ろのA席の方々からは、どのような風情で観られていたのでしょう。

    舞台はまさにキャバレー様式で、串田和美氏の口上で華々しく幕開けします。
    開演と同時にレビューがあり、舞台上のコックやウェイトレスが、それぞれの役柄を割り振りながら劇へと導入していきます。レビューはラストにもあって、まさにキャバレー感満載、楽しいことは楽しいのですが、劇の内容はというと、かなりシリアス。

    序盤は、気の良い荷役士が買い物に出かけて、兵士たちのトラブルに巻き込まれ、自身も兵士に扮することになるという、まさに落語の世界。与太郎話とも言える展開で、ここまでは笑顔でいらられるのですが、何と言っても脚本はブレヒト、一筋縄でいかない展開は、後半、やや陰気で恐ろしいものに変貌していきます。

    共同プロデュースの白井晃氏が、パンフレットの中で書いておりましたが、タイトルを「男は男だ」と訳すのではなく、「人間は人間だ」一層意訳して「私は私だ」あるいは「個は個だ」とした方がよいのではという意見には賛成。
    個人の存在基盤とは何かという深淵なテーマに入っていきます。気の良い荷役士は、他の兵士のたくらみで、兵士に成りすまさざる負えなくなり、いつの間にか好戦的で勇猛果敢な兵士となって戦場に躍り出ていくようになります。そして、成りすまされた本来の兵士は、自らの存在証明をできなくなり、仲間からも疎んじられる存在へと変貌していきます。この変容が、何となくユーモアに包まれながらも、平穏になされていくのがとても怖い。考えるだに、背筋を冷たい汗が伝うような気味の悪さを覚えます。

    フライヤーの表紙の絵は、串田氏自身が書いたようですが、そこからも、彼がこの舞台の内容に十分な理解をしていたことは明白で(顔のない兵士、名前のない標識番号)、それをなぜキャバレー風な舞台としたかは、ちょっと不思議というか何というか。もしかしたら、能天気な風を装うことで、この舞台で繰り広げられた悲喜劇を、笑い飛ばそうとしたのかもしれません。

    とにもかくにも、料理ともども、舞台も楽しませていただきました。
    ちょこちょこと、役者さんにもいじってもらいましたしね。

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    2019/02/04 17:08

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