『スーパープレミアムソフト W バニラリッチソリッド』 公演情報 チェルフィッチュ「『スーパープレミアムソフト W バニラリッチソリッド』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台の奥、八分あたりにコンビニの店の陳列棚を描いた紗幕が下がっている。コンビニのアルバイトらしき店員が二人出てきて、個人が孤立している現代社会でのコンビニの仕組みや店長や経営への不満、索漠たる仕事の話を、チェルフィッチュ独特の動きと共に語り出す。これはコンビニを巡る現代劇なのだ。国際共同制作が出来たのだから、こういう状況は世界(今回はヨーロッパだが)に通じる現代の風景と言う事だろう。
    「三月の五日間」で鮮烈な衝撃を受けてからもう十五年近い。この作品をきっかけに、岡田は国内よりも海外に仕事の場を求めてきた。国内での消耗を避けるというのは賢明な判断だったのかもしれない。今回の舞台も再演と言う事だ。(初演は見ていない)。
    ストーリーは、コンビニの二人の従業員と店長、それに本店の地区責任者と、後半新しく来たアルバイト店員が加わる。客は、深夜になるとアイスを食べずにいられなくなる女(彼女がこのコンビニで買う愛好物が長たらしい名前のスパープレミアムソフトWバニラリッチだ)と、見るだけで買わない客が、二人。慎重に雑狭物は取り除かれているが、「三月」と同じように、ここでは特に変わった事件が起きるでもなく、彼らの生活は続いていく。しかし、すべての登場人物に共通する現代人の「やってられないよ」という根こぎされた生活と心情がユニークな振り付けで演じられる。
    丁寧に作り込まれていて、チェルフィッチュの世界に引き込まれた。エピソードごとに休止符を打つスタイルは洗練され、無駄がなく、何より見ていて面白いし楽しめる。背景音楽のバッハも巧みな選曲だ。1時間50分。あまり宣伝もしていなかったのに、見た回は掛け値なしの満席であった。
    見た回は英語のスーパー付きの回だった。世界各地で上演するときはこういう形でやるのだろう。よくはわからないが、日本的な現代語台詞を無理にそれらしく英訳しているのではなく、内容を伝える翻訳で、言葉(オトで聞こえる台詞)よりも身体の動きで世界に共通する現代人の状況を伝えようとしていると感じた。国際的な演劇の場も変わっていく。

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    2019/02/02 21:25

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