満足度★★★★
オフィスマウンテン観劇で6公演を曲がりなりに走破(冒頭見逃したのも含め)。
二度目のオフィスMは、山縣氏のユニット立ち上げレパ(2015)であるが、後でデータみれば初演は出演者4名となっている。今回のアゴラ公演は山縣氏単独のパフォーマンス。「一人芝居か・・1時間弱とは言え耐えられるかな」と一瞬過ぎった不安は杞憂、上演開始から左脳的理解を拒んだ動作と発語に引き込まれていた。予測を裏切りつつ、しかしある「流れ」を辿っている感じ。また「今初めてそこで起こったかのような」身体的反応は近代演劇が俳優に求めた高度な技術の範疇。
山縣太一という鍛えられた肉体と芸が鑑賞の対象と言って誤りでない。
昨年観た「ドッグマンノーライフ」の感想に私は「個々の役者の身体能力のバラツキが気になった(山縣氏がやれば見られる芸になる)」という趣旨の事を書いていた。それを裏付ける結果を見た気もするが、私としては共演舞台の道は手放さないでほしい(手放してないと思うが)。
身体動作の基調は主観的な「呟き」(勿論発語も含め)であるが、演じられる本人(だか別人)が職場の後輩二人を飲みに誘う(ノミニケーション)という具体的シーンも断片的に外側から入り込んでくるように現れるのが面白い。
現代の(演者自身の年齢である)アラフォーの生活風景、精神風景が表現者・山縣太一の身体から立ち上るのがこの上演のミソ。
私の近くの兄貴は一々ツボであるらしく山縣氏の発語に吹き出していた。私にも伝染しそうになったが(私も十分楽しんでいたが)、徒手で挑む姿勢と独特なポジティブ志向は「天性」(天然?)に属するものかな。氏が追求する方向性に何があるのか私には想像もつかないが。
今回の「競演者」である大谷能生氏の音楽は微妙に絡む距離感で、これも色彩を明確に出さず左脳的理解をさり気なくかわしていた。
呆気ないと言えば呆気なく終わる「演劇」だったが、山縣氏の身体負荷に同期していたのか緊張が解けた瞬間の快い疲労が見舞った。
ネタバレにて、後日「企画」総評を。