千牢の果てに咲く 公演情報 芸術集団れんこんきすた「千牢の果てに咲く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    追随を許さない美しさ
    美しくて、胸が痛くなるような舞台だった。

    物語の舞台は宇宙なのに、舞台は狭い。それが皇女の孤独を初めとする各人の心の空間を表現していた。すぐそばにいるのに、心だけが狭い舞台の上で果てしない距離を離れている。その寂しさと空虚さを感じるのに、効果的な狭さだった。

    その狭さをものともせず、余すことなく観客を魅了する見事な踊り!第4期お披露目の吉田知恵子の踊りは素晴らしい。演技はまだ未熟だが、彼女は動きで喜怒哀楽を表現する方法を知っている!

    そして座長の中川朝子。
    美しく危うく、心の篭っていない、唇のはしから零れ落ちるような文語調の台詞が、虚ろで悲しい高貴な女性を効果的に表現していた。けれど身体能力の高さは健在。絢爛な衣装でダンスシーンは少ないが、平素の立ち振る舞いで、難しい動作を難なくこなす。

    客演の佐々木もよくこなしていたが、身のこなしの美しさではやはり、二人に及ばない。けれど熱演だった。

    客演の男優二人も、多少、異物感を否めないが、それこそが、「皇女の世界に入り込んできた異分子」としての表現であるなら、演出意図は的確なのかもしれない。ただ、もう少し演技の雰囲気を併せる努力は欲しかった。

    れんこんきすたの美しさは、姿形だけのことではない。

    もちろん、それが大事な要素であることを彼女達ははっきりと主張しているけれど、彼女達の美しさは、壮大なテーマに恐れなく立ち向かおうとする勇気にも由来するのだと感じた。

    命、愛、憎しみ、悲哀に歓喜。

    口にすると観念的で、上滑りをするようなテーマから、彼女達が逃げることは決してない。

    舞台の最後で、皇女と踊り子が固く抱き合う。
    皇女の夢は叶わず、踊り子も憎しみに折り合いを付けた訳ではない。
    でも互いに抱き合い、涙を流し、慈しみ合う。

    その姿に彼女達の覚悟のような、愚直な生き方のようなものが見えた。

    観たあとに、自然と涙が流れた。
    今時流行りの洒落た舞台でないけれど、こう言う真面目な舞台が一作でも多く世に生まれてくれることを望む。

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    2009/03/24 23:31

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