満足度★★★★
■75分弱+アフタートーク■
旗揚げ公演にして、おそらくは解散公演。だって、大粒アッコは演劇ビギナー、ひさつねあゆみと億なつきは奔放すぎて、森桃子は素がナイーブそう、要するに、リーダーシップを取れそうなメンバーが一人もいないのだ。しかも、脚本提供者の一人・山西竜矢氏を招いてのアフタートークによれば「全員、我が強い」(山西氏談)上に「喧嘩が絶えなかった」(メンバー談)そう。これで、まとまるわけがない。今回ばかりは「旗揚げ」ということがモチベーションとなってなんとか上演まで漕ぎつけられたかもしれないが、今後はそのモチベーションも失われるわけで、第2回公演の実現は大いに危ぶまれる。
仮に行われるにせよ、“オール自主創作による公演”なんて絶対に目指さないこと!! 今回は岩崎う大、山西竜矢という二人の異才が優れた脚本を書き下ろしてくれた上、演出にも手を貸してくれた(岩崎作品については未確認)からなんとか観るに耐える公演になったが、森桃子、ひさつねあゆみ各氏によるソロパフォーマンスは申し訳程度のストーリーがあるばかりでセリフすらなく口から出るのは絶叫と悲鳴のみというお粗末さ、山西・岩崎作品の幕間に余興的位置づけで演じられたから許されたようなものの、仮に“オール自主創作公演”となり、あの手合いの作品ばかりで公演が埋め尽くされたら、少なくとも私は耐えられない。
そういうわけで、第2回がもしあるのなら、山西・岩崎両氏に匹敵する作家の助力を仰ぐことが必須条件となろう。
いや、可能ならば、引き続き両氏に脚本の寄稿をお願いするのがよいのではないか?
話に笑いを織り込める両氏の作なら楽しんで観られるし、役者としての能力が未知数の大粒氏を除く3氏についてはコメディエンヌとしての資質がはっきり認められるので。
少なくとも私は、このメンツによるシリアス芝居なんて観たくないし、そんなものは他の客も喜ばないだろう。
今回、★★★★を付けたのも、中核に両氏の優れた書き下ろし作品があり、奇想と笑いをフィーチュアしたこの2作品を面白おかしく演じる力がこの座組にあったからである。
岩崎う大氏の短編は、筒井康隆の昔のSF短編にこんな話があってもおかしくないと思えるくらいに奇抜でブラックな発想を“女だけの座組”が生かされるように上手く作品展開した佳編。
山西竜矢氏の短編は奇想にポエジーが加味されて不思議な味わいを醸し、こちらもたいへん面白く観た。
しかし、岩崎氏も山西氏もそれぞれ森桃子、億なつきの盟友であり、知り合いのよしみで格安ないしはノーギャラで脚本を引き受けたに違いないが、仮に条件が悪くともこういう仕事は受けておくべきだなあ。
岩崎氏については、すでに私はその劇団の顧客だが(って2作品しか観てないけど、今後も観続けたいと思っている)、山西氏の存在は当公演をもって初めて知り、主宰するピンク・リバティの7月公演を観ることをすでに決めている。つまり、山西氏はこの団体への脚本提供で客を一人増やしたわけであり、その脚本提供には波及効果があったわけだ。
いや、本当、抜群に面白かったので、増えるお客さんは一人ではきかないだろう。
ついでながら、山西さんは持ち前の明るさと関西人らしいざっくばらんな話術でアフタートークも盛り上げてくださって、人物にも好感を持ちました