鐡の夢果て 公演情報 MEHEM「鐡の夢果て」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/12/23 (日)

    夢で繋がる2つの平行世界… 少し近未来感のある現代にいる「尊」と… 今とは異質なサイバーパンク世界にいる「タケル」。

    ともに斬新な発想を形にする"ものづくり"に携わる裏に、夢で見た相手の「世界」がインスピレーションとなっているという背景があるのだが… ​その…一種の「夢の模倣」に依存し続けた結果として、寄り添いすぎた2つの世界が まるで歯車が噛み合うが如く繋がり… 干渉を始める展開が面白い。

    以降、ネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】

    双方が寄り添い過ぎたその先に浮かび上がってくるシンクロニシティ… それによる歪みと苦悩は… 実は社会における本人のアイデンティティの問題にも重なって、事態が好転する過程においてさえ…尊が自世界に自分の存在を見失うシーンなどが印象的でした。

    ​ドラマ展開のテンポも良く、最初は尊とタケルだけの繋がりに見えたシンクロが、2世界の登場人物悉くに波及していき、行動にユニゾンを感じさせる演出が多発していくところに…不思議な高揚感があって良かった。役者2人で実質の1キャラを盛り上げる相乗効果も感じました。理(コトワリ)の違う世界の間でも、同じ人の営みとして共通の真理を身近に寄せてきた印象もありましたね。

    さて…斯様に充分楽しんだことは評価・自覚した上で、この手の因果関係が込み入ったり、パラドックスを想起させるお話は思索を誘発して、観た後も楽しいので、色々語ります。決して難癖つけているわけではなく、マニアが解釈を楽しんでいるぐらいに思ってください。

    まず、当初テーマかと思えた「 夢で見たものの真似はオリジナルと言えるのか」の部分について。
    タケルは夢で尊側の世界を見て 飛行機やガジェット類の着想を得ていることが明確に語られているのに、尊の開発(サイバネスティックからの… AI、アンドロイド開発)はサイバーパンクの世界から何の着想を得ているのかが あまり汲み取れなかった。

    これを前向きに解釈して… もし尊の「影響の受け方」が直接的でない…とするなら、その不整合さの中に「尊がオリジナリティを持つ者」として評価されるべき 何かが隠されれていると想像する余地があると思う。応用研究者みたいな感じで。

    ただ… 人体と機械の電脳的な融合は、本当はサイバーパンクの典型的世界なので、既に当たり前の前提となっていて 単に状況表現が端折られていた…とも考えられる。サイバーパンク世界のタケルが逆に現代社会の物(飛行機やレトロな機関)の開発に入れ込んでいるので、いまいちその辺りがどうなのかは見えてこなかったけど。

    おっと脱線した…

    で、途中で「夢の模倣」を肯定する発言も出てきたので、そこのロジックに期待もしていたのですが、…最終的に尊は「夢の世界からの着想」への依存を断ち切る決断をする。それはそれでアイデンティティを保つ上での決断として受け入れられる展開なのだが、そこに至る過程が少しモヤモヤする。

    「2つの世界の分離」が… 例えば「世界の存在自体を危うくする」とか… 何か根源的なものであるなら… 受け容れざるを得ないのだが、何となく「片方で起こる悪いことが… 他方でも起こるから…」という動機に基づいている様に見えるのが、しっくりこなかった。
    リスク回避なら もっと別の次元の話ではないかな…という気がしたのだ。

    因果律のロジックは如何様にも拡げられるので、そうも言い切れないことは自覚しているが、真壁の言い様じゃないけど、やり様があるんじゃないか…という印象が拭えない… 何となくオリジナリティに拘り過ぎな感じもあって、それは作り手志向ゆえかもしれませんね。…私も…シンプルに「運命から逃れるために…」的に受け取れれば、良かったかもしれないかな。

    また、NINAと決別することで、夢の世界とも決別する選択をするのだが、それじゃ2つの世界のシンクロニシティが より増してないか?という印象も受けました。2つの世界で唯一「対応する者」がおらず、独立していたのがNINAだったので。

    勿論 NINAの存在が「夢への依存」の具現なので消さねばならなかった…ということは理解できるのだけど…逆にNINAの「存在価値」の中にこそ、2つの世界を別つ鍵を見出して欲しかったかな… せっかく独立した存在だったのだし。まぁ、趣味的な話ではあります。(登場人物の中で 一番気に入ったのがNINAだったことの影響は否めない感想だ(笑)…)

    もう一つ。

    尊とタケルは相互に夢に着想を得ていた構成で、それ自体が売りな気もしますが、…精神的な依存関係としては、タケルは手段を夢に依存していない(様にみえる)。

    だから、インタラクティブに話の構造や因果を考えると、かえって混乱しました。シンプルに「尊の夢⇒タケル」の一方向の構造でも良かったんじゃないかな… そんなことも考えました。

    徒然感想にも程があるので そろそろオシマイ。

    重ねて言うと… 面白かったからこその思索の振り返りです。ダメ出しじゃないので念のため。

    0

    2019/01/03 20:28

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大