転調少女 公演情報 fuzzy m. Arts「転調少女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/12/09 (日)

    祖母 蘭子と2人暮らしのJK 紅子。何故か別居の父 清治。そして、この家族?を取り巻く…一筋縄ではいかない奇人変人の登場人物たち。流れとしては…紅子がバイトして、蘭子と2人でディズニー旅行へ行くまでの顛末を軸に、割と淡々とした調子で家族3人の内面が掘り下げられていくのですが、挟み込まれる意図が読めない事件や… そもそも今もって現象の意味が掴めない謎エピソードも入ってくる…不思議なテイストのお話でした。

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    ネタバレBOX

    【続き】

    パンフで語られている作品コンセプトにテーマとして謳われているのは「継承」で、確かに 紅子が…大好きな祖母・蘭子の存在を継いでいく感じで締めくくられますが、私に一番印象が残っているのは、この親子3人が長年の積み重ねで形成するに至った…悟りとしての「距離感」ですね。

    ​若き頃、蘭子にとことんまで追い詰められた清治。清治の窮地に…紅子を引き取り育てた蘭子。蘭子に理想の母像を重ねて慕う紅子。育ててもらえなかった蟠りを紅子にぶつけられる清治。…

    しかしこの3人は… 縁を切ることはしなかった。相性の悪い人には近づきすぎない… 例え親族であっても無理はしない…でも決別はしない。悲劇の後の苦悶の果てに生まれた…「好きじゃないけど嫌いじゃないよ」という距離感が作り出す穏やかな関係性が、異なる価値観と共存する多様性の在り方を感じさせてくれました。

    一つの失敗した関係性で自分を全否定することなく、清治の良い母ではいられなかったけど、紅子の良い祖母(養母)にはなれるかもしれない… という立ち直りとやり直し… できることをすれば良い… という自分自身の受け容れ方に、温かな眼差しを見た思いがします。

    まあ、マジメな話はここまでにして(笑)、
    とりまく奇人変人たちの味が、如何にもfuzzyらしくて、良かったですね。

    ダミさん演じるプエルトリコ育ちの純血日本人「田中ナッターシャルーンポリサワ」を一推しにしてきました。その可笑しみの深い口調と、言われたことを何でも善意に翻訳してしまうリアクションが好きでした。

    次点は、矢島さん演じるキモカワ系の不思議少女 成瀬と、鞍本さん演じる…エキセントリックな価値観の持ち主 西園寺でしたね。

    あと、校長先生の不思議なキャラメイクも魅力でした。
    「生徒に耳を傾けることが全ての解決の始まりだと思っていた。」という真面目なくだりから… 「聞かないと分からないようじゃダメなこともある。話をすることすらできない子もいる。」→「聞かずに感じれる感受性が必要。」→ 「視覚の異常発達!」 という… 生物的進化を遂げた謎生物ぶり。

    いずれ成瀬の研究対象になるのでは…という趣きでした。

    ぶっちゃけ、お話の核になっても可笑しくない個性でしたね。
    そういえば、しばたさんは、ズラで出てきた母4or5、もうちょっと見たかったなぁ(笑)

    そして… そして… 、最後の最後まで「ポリサワ」は謎であり続けました。

    未だに一切が謎(笑)、モチーフも謎ならば、意図することも謎。素敵な味わいでした。

    そして、

    『ハヤシテンキは、その辺によくウンコする』

    何という風評被害か(笑) 

    あ、最後に… 「どんなに無茶であっても、着々と手順を踏んで決められたルールは… 知らなかったでは済まされない」は、思いっきり…今の日本社会の暗喩で、実は近頃こういうシニカルさを差し込む芝居が多くて、こんなとこから世相への不安を実感させられますね。

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    2019/01/03 19:58

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