『ソウル市民』『ソウル市民1919』 公演情報 青年団「『ソウル市民』『ソウル市民1919』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/12/01 (土)

    舞台は日本植民地下のソウル…文具店を経営する裕福そうな「篠崎一家」宅。

    物語があるでなく… 登場人物が発する主張があるでなく… とりとめもない会話と出来事がひたすら流れていく。しかし… 人々の日常を温かく描写してほっこり…って…感じではない不穏さが潜むのだ。いや、篠崎一家にとっては紛れもなく何のこともない穏やかな日常なのだが… その「普通」が寄って立つ常識… 価値観が決して不変なモノではないことが透けて見える感じかする。

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    ネタバレBOX

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    簡単に言ってしまえは、… 善良な(つもりの)支配者意識。

    確かに篠崎一家の朝鮮人への振る舞いは…当時としては先進的で善意に溢れているのだが… やはり随所に滲み出るのが優越意識、上から目線、保護者的な自負。

    一方で欧米人に対して「自分達を猿だと思っている」… と差別に不平を漏らす二律背反ぶりなのだ。

    これが…結果を知っている歴史的背景、現代の意識の元でならハッキリと分る差別・支配の構図も… 果たして当事者だったとしても、胸を張ってその問題点を指摘できるだろうか。…そして翻って、今の社会を… 自らの今の在りようにすら疑問を抱かせる。事は国家間の関係に留まらない… 一社会における格差、夫婦・親子・家族内における支配の構図等も…また然りだと思える。ドラマチックで無いが故にとても強度のある「偽りを感じさせない日常描写」で本質に迫ってきた気がした。

    この2作の展開・構成はとても酷似していて、世代や人が入れ替わっても まるで一日千秋の如くなのだが、「ソウル市民1919」では…家の外で高まる三・一運動を重ね合わせることで …より明確に支配者意識を浮き立たせている。それが返って、穏やかだった…先の「ソウル市民」での同じ意識をモヤモヤと炙り出す。穏やかな状況の中に潜み、育まれている危険で差別的な思想を思い返せる仕組みで、通しで観られる機会は貴重でした。

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    2019/01/03 19:41

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