SDN2018 『ハマったら出られなくなりまして』 公演情報 無名劇団「SDN2018 『ハマったら出られなくなりまして』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/11/25 (日)

    姉 由紀の葬儀の為に帰郷した妹 幸子。姉と違って何でもできる優等生…人も羨む人気者だった筈の幸子が抱える意外な自己喪失…心の闇。避けてきた過去の記憶に曝され、危うくなっていく過程が… 面白い演出と… えっ?となる結末で彩られる。

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    ネタバレBOX

    【続き】

    思っていたより鬱展開で、興味深い精神性が描かれていた。
    全体の雰囲気として一番興味深かったのは小学生時代の演出。由紀の造形作品からそのまま抜け出して現れた…生き物をモチーフにした姿。しかも極彩色だったり、蜘蛛とかミミズとかキモイ系も混じって彩られているのが印象的で、単なる過去の事実ではなく… モヤモヤした感情を纏った"記憶"って感じで、鬱な世界に落ち込んでいく作品世界にとても合っていましたね。

    そして核心の「ハマる」という部分なんだけど、本作、実は8月ぐらいに大阪観劇した際に入手した仮チラシで興味を惹かれたモノだったのですが… この時のあらすじはちょっと本番と趣きが違ってて、オタクの臓腑を抉るような空気があった。

    だから、「ハマる」って、てっきりオタク趣味のことだと想像していたのだが、これが何とも意外性がある面白い方向に裏切られた。

    母の愛情のほとんどが…「出来ない子・姉」に注がれる中、欠乏した母の愛情を埋めるように…周りの評価に貪欲になる幸子。頑張れば頑張るほど「あなたは一人で出来るから大丈夫…」と母に放置される悪循環。

    更には…一転、姉が芸術面で世間に圧倒的な評価を受けるに至っては、ただでさえ無意味だった「出来る子」のプライドすら下落する不幸の連鎖。いやぁ、この子の名が「幸子」というのが、また皮肉だよ。

    結果として自分に貼り続けざるを得なかったレッテルの数々にどんどんハマっていき… 「分相応」を一切許容することができなくなってしまった精神性… 見栄の空虚さが何とも憐れ。…まさしく自ら墓穴を掘って沈んでいく演出が強烈だった。最後の最後まで…母に自分を曝け出せなかった業の深さも辛い。

    そして、そして… ソレだけで終わらないところ… もっとハマってたヤツがいたというのが本作の秀逸なところで、…実は幸子の最大の理解者・信奉者が、幸子の暗部を増長させていた… 幸子の数々の不幸な事件の鍵を握っていた… そして今回が特に… という歪んだ愛情のサイコホラー感…その切れ味が鋭かった。自慢気な語りが非常に効いてたなぁ、怖いっ。…なお、有料パンフ(ノート凝ってる!)の方で… 「仮チラ時の話」から「本番仕様の最終稿」に変遷していく過程が克明に書かれていたのが興味深かったです。こういうの晒してくれるのって珍しい。

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    2019/01/03 19:21

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  • 遠いところからお越しくださいまして、また1stの一人芝居フェスとハシゴ観劇してくださいまして、本当に本当にありがとうございました。
    また、こんなに詳細にたくさんのご感想を頂戴し、感謝の気持ちでいっぱいです。
    本年も、一同精進して参ります!

    2019/01/10 15:56

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