ワンラブスーサイド 公演情報 南山大学演劇部「HI-SECO」企画「ワンラブスーサイド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/11/03 (土)

    今年も当たりを引いた学祭公演。振れ幅多様な短編群に、代替りしても楽しませてくれる予感が溢れました。

    各話の感想をネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】

    「魅せられて」

    舞台上に「飛び道具」しかいねぇ!… 奇人変人が飛び交いボケを放ち続ける大空中戦。それを1人で受け止めるツッコミ役ヒロインの頑張りも目立ちましたね。普通の会話劇とは異なるツッコミの呼吸への課題はあるものの、…何となく演劇にしては漫画的な新鮮味を感じました。背後に書き文字が見える(笑)

    ハイテンポの展開に不条理劇の味わいもあって、掴みの演目としての役割を充分に果たしていましたね。
    ただ、ひたすら斜め上を行き続けた展開ゆえ、…選択肢の少ない最終局面で…返ってオチが予想できちゃったのが少し惜しかったですね。最後に更に突き抜けた…ここぞという隠し玉が欲しかったところでした。"


    「ハナのかぞく」

    最後にじわっとタイトルが利いてくる… 老犬ハナの家族の物語。逆説で繋げるセンス。

    ハナの視点で…少女シホの家族の中での様子が語られるが… 違和感を少しずつ散りばめて、壊れた家族の姿を浮き彫りにしていくプロセスがミステリーじみていて好みの展開。

    関係悪化の両親、ハナの延命/安楽死判断の2つの話を… 漠然と別物として眺めていたら、不意にシホが放った「分からないと思った?」というセリフが…「ハナに対するもの」と「シホに対するもの」の​Wミーニングになって重なり合い、2つの話を繋ぎ合わせた。そこまで割とぬるめに眺めていた私の心にビビッと響いて、ドキリとしました。

    そこから安易に夫婦が和解したりしないのにも重みがあって… 翌朝、母がなけなしの決意で掛けた「オハヨウ」という言葉に…父が一旦 目を伏せ… そこからゆっくり視線を上げ始めた刹那に…溶暗して終わる余韻がとても良かったです。


    「パラダイス・ロスト」

    衝撃的な価値観で展開する物語は極めて鮮烈。

    未来に希望を見出せない…昨今の世相を如実に反映した主人公ケンジを…更に巨大な邪悪さをもって呑み込む「自殺ガールズ」の存在感は凄まじいの一語に尽きる。取り憑いた彼女達の可愛らしい外見から吐き出される悪口のギャップは、大きな落差をもって対象に毒を滲み渡らせる。生前から狂気に取り憑かれた3人の価値観…生の感覚を楽しむ為の遊戯… 死の一歩手前で生を謳歌する危険な遊びが…更に一歩を踏み出してしまうまでの流れは明らかにサイコホラーのそれ。



    描かれはしなかったが…まだ遊びのつもりだったのに… アスカに漆黒の闇に引き摺り込まれたミキとサナの最期もちょっと見てみたかった…恐いもの見たさ。

    いやぁ… それにしてもアスカの狂気は本当に鮮烈だった。

    「私は世界中の誰よりも生きている…」

    なんて痺れる辞世の呟き。
    締め括りとしてはしごく真っ当な「生きていたい…」という結びが、​作品として取り繕っていると思えてしまう程、ピークでの鮮烈さは素晴らしかったです。

    そういや…いつの間にか主人公がケンジからアスカに切り替わってたなぁ。
    まさしくアスカがケンジを喰っちゃってた感じだ。"

    0

    2019/01/03 18:11

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大