今日も、バスが来ない! 公演情報 劇団 蒼天の猫標識「今日も、バスが来ない!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/09/29 (土)

    「バスが来ない」「バスは来ない」に続く…再演に非ず…リメイクというべきブラッシュアップ。結構、後味も変わった。

    夢を叶えるため東京行のバスを待ち続ける少女・ひじき。バス亭にたむろする…夢追いの先輩たち(海藻女子)。そして意味ありげにバス亭に座する謎の男。

    楽しく夢を語り続ける先にあるものは… 果たしてバスは来るのか…そもそもバスとは何なのか。短編アレンジとなり、長編での味でもあった不穏さとミステリー感を思い切って削ぎ落した代わりに…核心に よりストレートにリーチ。

    以降、ネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】

    今回は「本当の夢を取り戻す人」のみにフォーカスされたけど、実は前作には「夢を諦める人(周りに流された人)」がW主人公的に存在していて、そこら辺への慈愛に満ちた描き方が味わいにもなっていたのです… いや、前作でのインパクトはむしろそちらの方にあった。

    しかし、今回は前者に絞り、展開を1本に集約することで、初めての土地でも観客への訴求力が増していたと思う。

    それを後押しする意味で、エンタロウ(前作のアカシア ポジション)も より存在感を増した。
    終始その場に存在し、興味なさげに振る舞いながら、ポツリポツリと投げかける言葉が、ことごとく複線であり、核心にそっと触れては消えていく。

    終盤では、蒼天作品には珍しいテンションの高いセリフ(「あなたのことですよ!」… から、「そんなところは無い!」のくだり)がとても印象的でした。観察者の筈だったのに… つい踏み込んでしまった気持ちの変化に、彼がこれまで観察者として積み重ねてきた無念の想いがうっすら見えました。
    それ自体が…自称「夢を追う人」達への揶揄にも思える。

    あと、前作との印象の違いで言うと、海藻女子たちの志望ジャンルが分散することで、オタトークが薄まって内容が一般化されたな。なんせ前作は主人公以外もみんな声優志望だったので、会話の濃さが半端なかった。その濃さと…海藻女子たちののめり込む感覚が、異様な世界をカモフラージュする味だし、楽しみでもあったのだが、同じクラスタでない人には… 濃すぎだったのかもしれない。それゆえの方針転換なのだろうか。

    ひじきのバイト先のメンバーが伝聞ではなく…実際に出てきたのも、夢を追うことへの外圧を生々しく感じさせてくれて良かった。

    彼らのとんでもなく違和感を放つ衣装は、逆を言えば、一般の人たち…あるいは夢を諦めて現実に呑まれた人たちにとっての…「夢を追い続ける人」に感じる異質を示すものでもあったと思う。

    思えば…「バス停」が無くなってしまった世界…というのも、夢を追えなくなってしまった社会を暗喩しているのだろうねぇ。

    演出面で最も目を…耳を惹くのは、東京生活を礼賛する「SNSでの投稿やリアクション」が多重的に膨張していくシーン。(座組での通称は「東京賛歌」だそうな。)

    前作からあったシーンなのだが、無機質で感情を込めないセリフに… 照明による多色多重のキャストの影、…シーン終盤から輪唱の様に付加される声が折り重なって、重層的に夢追い人を呑み込んでいく空虚感が強まった。

    この感覚の強度は座った場所によってだいぶん違った様で、2度目に最前列桟敷で観た時は、上から降ってきて包み込んでくる音響効果が…もうホント凄くて、なんか吸い込まれていきそうだった。

    いばさんの作風が変わりつつある今、過去作での謎めく感じに、今の「身近な心情の彫り込み」が加わる…過渡期ならではの作品でした。

    新キャストも美味しすぎ。蒼天は推しの巣窟なのに、客演まで悉く推しばっかりで、ホント夢の国!

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    2019/01/03 17:14

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