沙翁十四行詩集 故郷へ帰りたい 公演情報 Contondo「沙翁十四行詩集 故郷へ帰りたい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/09/16 (日)

    公演形式としては、この週で最も異色、「展覧会形式」を標榜します。演劇のカテゴリーを飛び出した本公演は、出入り自由、どこから観てもOK、会場内の徘徊も自由、撮影自由、SNSへの投稿自由…というと、愛知トリエンナーレ感覚だよね。インスタレーション展示の様でもあり、映像作品を流し続けるのを「生」でやっている感じでもある。演劇クラスタ以外も呼び込める魅力があるよなぁ。自分が美術鑑賞クラスタから流れてきた人間だから、このハイブリッド感はとても心地よい。

    概要として、モチーフにシェークスピアのソネット(十四行詩)を持ってきて、詩の1行1行が「ごく短時間の芝居」に相当する全体構造をしている。全体で一つの詩とまで感じ取れるかどうかは観客の歓声と解釈次第だろう。ぶどうさんなら、そういう仕込みがあってもおかしくはないけど。(私にはソネット自体を味わえる教養が無いので比較してどうかは語る術がない。)
    深く考えずに感性で観ることもお勧めされているけど、じっくり腰を据えて、何度も眺めて思索に耽るのも楽しいよ。

    さて、中身はソネット73番をベースに「老い」をメインテーマに持ってきているとのことだが… 何となく、「まだそれなりに若さの残る年代…だけれど子供ではない…」というお年頃の視点から、まだ幼き老いに思いを馳せる感じが窺える。主客層であろう若者には ちょうど等身大だな… そんな感じがする。ただ、そんな個人の印象を超えたところにこそ 本作品の趣きがあって、まるでエチュードの様に役者が世界を拡げていく感じだ。多分…いや絶対…観客の心に浮かぶ世界は、また更に拡がりをみせているはずで、楽しみは本当に多様だ。

    以降、ネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】 スケッチ毎の感想

    「大きな散歩」
    会場で開演を待っていると…最初に現れるのが彼女…別のお客と見紛うこの空気(笑)
    大きなリュックをヨイショと背負ったアラサー女子が…その半生に想いを馳せるお散歩。くよくよ考えるお年頃だけど…自由人らしい悟りと確信の言葉がとっても良いのよ。

    「Take Me Home」
    リュックから溢れ出る彼女の半生。この時点で、この大荷物は彼女がこれまで積み重ねてきたモノの隠喩なのかも…と思い返した。次々と現れる愛おしい半生のパーツ達… ここら辺りから、グッとこの作品の空気に取り込まれる。この子の性分に何か共感(笑

    「ライン・ダンス」
    題の意味は…観始めれば…ほどなく理解できる。役者達がとても愛らしく感じられる逸品。公演の中では最も異質かもしれないが、この作品群の制作過程を一番想像させるものにもなっている。これはね、何度も観るといいよ。私はここは3回観れた。幸せ。
    「街」
    不意に…リュックの彼女の半生が…再構成されていく。最初は何が始まっているのか分からないが…これこそまずは感性で味わうべきもの。勿論、誰しもが気づくポイントはあるが、これが何から生まれたかを考えると意味深だ。半生から…悠久の時間へ移ろっていく。

    「宇宙少女、わたしと出逢う」
    ここから一転。おっとビックリの宇宙少女降臨… なのかは分からないが、他には考えられないだろう(笑)
    舞台を漂いながら…その手に携える「時の流れ」の意味するものは。​正直…ディテールはよく見えない。だからこそ、妄想がモノを言う。

    「宇宙少女、中也を詠う」
    これがまたシュールな世界に突入。中原中也の『星とピエロ』を宇宙少女がロックに詠唱…不思議な組み合わせなのに、「宇宙少女の存在」と「つぶやく言葉」が絶妙に相性良いんだコレが。霊媒感もあるね。この異世界感はぜひ生で体験しとくれ。

    「宇宙少女、銀河を育てる」
    これは公式アカウントで動画が上がっているけど、4人の男女が作り上げる「多重多層の囁き空間」は その中に入って体験してこそだ。自ら会場を漂いつつ…4人の囁きに耳をそばだてる。自らが異空間に紛れ込んだ感覚は 体験型アート空間。

    「宇宙少女時間旅行」
    その佇まいは…まるで「籠の中のインコ」のよう。ピンキーな2人…同じピンクでも印象は対照的な2人は、この籠の中で何を見る。何を思う。ブラックボックスの中で極めて映えたこの空間は…大阪ではどんな空気になるのだろうか。

    「風船を配る男」
    とっちらかしたものは片づけねばならぬ。暗転も幕間もないこの公演における…実は非常に興味深いプロセスでした。作業をしているだけのように見えながら楽しげ。回収と配布。けっして配ってはくれぬ風船。相反する事物を重ね合わせてどこへ行くのか。

    「ある雨の日の情景」
    これだけ、やけに現実的で生活感のある世界が流れていく。エッセイ的。26歳と15歳の間を隔てるもの…それは時間だけではなさそうだ。想い出の祖母の言葉にひどく含蓄が感じられ…リフレイン…でも…それは年を経ないと受け取れぬモノなのかも。​

    「珈琲の美味しい淹れ方に関する考察」
    珈琲の話をしているようでいて、そうでもない気もする。「珈琲」を何になぞらえるかで、このスケッチの先に見通せるものが形を変えそうだ。​2人の意識の差が…この先の道程を感じさせる。

    「<老い> ソネット73番を踊る」
    舞いの中に…時折り姿を現す「言葉」は…原詩に基づくものの様だ。キーワード"だけ"を連ね、その間を観客の想像に委ねて生み出される世界は、観客の数だけ様々な姿を見せるものなのだと思わせる。ぼやぁっとトランス状態で眺めるのが吉。

    …以上、12のスケッチ。



    これは1サイクル(90分)観るので止めてしまうと本当に勿体ない。2回目からが本番だ…1dayチケットが標準なのは伊達ではないと思う…徐々に見えてくる…頭に思い浮かぶものがあるのだ。なお、この12スケッチに「灯入れ」と「灯消し」を加えて14行詩としている様だ。
    スケッチ毎の音楽付き図鑑が気が利いている。音楽はさすがの いちろーさん。もやもやと想いを湧かせ、異空間の空気を味あわせてくれた。
    カットは…売り物にできるレベルの絵で紡がれる「絵コンテ」が有名な 主宰 紺野ぶどうさんのものでした。

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    2019/01/03 16:03

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