TERROR テロ 公演情報 パルコ+兵庫県立芸術文化センター「TERROR テロ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テロリストにハイジャックされ、7万人の観衆が集まっているスタジアムに突っ込もうとする旅客機を命令に背いて撃ち落としたパイロットが殺人罪に問われている。

    我々観客もその裁判に参審員(一般市民から選出され、裁判官とともに評議を行い、事実認定や量刑判断を行う)として参加しているのだ。

    事件の様子や背景が人々の言葉によって次第に立体化され、いくつもの視点が加えられていく過程は本当にスリリングであった。

    上演時間のうち大半は客席も明るく照らされて、我々もこの物語の一部であると感じさせられた。

    そういう枠組の面白さに加えてキャストはそれぞれ素晴らしく、それを観られただけでも行った甲斐があると思えた。

    ネタバレBOX

    特に印象に残ったいくつかのこと。

    たたみ込むような検察官の質問に翻弄され、あるいは心の内を引き出されて何か言い募ろうとした証人を「以上でけっこうです」とスッパリさえぎった検察官の言葉。

    過程を含めた質問に対して、「何を答えても嘘になる」と答えた被告の迷いと誠実さ。

    夫を失った妻が証言を終えて立ち去るとき、弁護士が立ち上がって頭を下げたこと。

    回想シーンでのかすかな音が緊張感を高めていた。

    最初に提示された事実に加えて、予想以上に多くの情報が集められ、事件を観る角度も広がりをみせていく。

    このあたりですでに自分の評決を決めつつあった。それは事前にあらすじを読んだときとは異なる結論だった。

    ステージ手前に2人のスタッフが立ち、それぞれ有罪と無罪の箱を持つ。我々は事前に配られた用紙をそのどちらかに入れる。

    この日の評決は、有罪209票:無罪200票。わずかな差で有罪であった。

    その結果を受けて、裁判長が判決を下す。1月16日から25日までの12公演で有罪6回、無罪6回と均衡しており、日々の有罪無罪の票数差もわずかだ。それだけ双方の証言や主張に説得力があった、ということかもしれない。

    判決を聴きながら、さまざまなことを考える。命の重さ、テロという暴力の理不尽さ、旅客機の乗客たちの行動、軍の考え方、被告の人となり、などなど。

    何が正しかったのか、彼はどうすべきだったのか、その正解はないのかもしれない。

    買って帰った原作には、2通りの結末が描かれている。もしも作者の胸の内に正解があるのなら、両方の結末を何度も読み返すうちにわかるものだろうか。

    そういう想いも含めて、面白いものを観た、と思う。

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    2019/01/02 01:58

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