尼を待つ 公演情報 三度目の思春期「尼を待つ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    久々にしあんを味わいに。同作者のタイムリープ○○も以前ここで、小粋に見せていた。今回はシリアス?と思いきや「笑い」は無いものの、時間と本人性を混濁させ(椿の花の効果とか)、人気の尼寺に悩み相談に来た主人公が、尼僧の到着を待つ間に一騒動の末、解決してしまうという趣向。
    柳井氏の戯曲は矛盾や齟齬がいつも引っ掛かりながら、最後には巧くまとめられ、スッキリ(完全にとは行かないが)させられる。役者が真情の見せ所、ポイントがあるのだと思うが、そこを掴んでいるからこういう小品一本で勝負できるんだろう...と、外側からの感想。

    ネタバレBOX

    もちろん気になる部分は気になるんだが。テレビにも出て生活アドバイザー的な役どころを得ている「成功した」女性にしては、人を遠ざけ、独りぼっちというのはどうか。会社を立ち上げ自立への欲求から離婚、成功は手にしたが孤独、自分が娘を捨てたから母親を名乗る資格なしと、娘の側から歩み寄ってるのに遠ざける精神性が、実業家のキャラに合わない。仕事面で限界が、個人史とリンクしてくる、というのならまだ判るのだが。役者が実業家のキャラより、主婦然としていたせいかも知れない。
    家庭生活の限界を感じて一念発起したのが始まりなのか、主婦業の延長で自立を志したまたま成功した順序かで、ドラマの様相はえらく変わるが、あまり追求していない。
    等あれこれあって、リアリティが減退すれば感動も減るが、味わうのは作劇の妙であるからして、人情の機微では二の次。不可思議な現象のカラクリが解け、その上で最後に自分の意思を明確にして未来に踏み出す、というドラマ構造が示され、結末に辿り着けば上がりである。ある種のこれもミステリーと言える。解決してスッキリする、パズルを解いた悦びと同じ。多くの演劇は「謎解き」を楽しむもので、パズルが難解であるほど(リアルをより深く追求したものほど)快楽も大きいというのに過ぎない。柳井氏の小品はその骨格をシンプルに見せるだけ潔いと言える?
    ただ演劇の力は現実と交錯する側面にある、と考える私としては、もう一歩二歩リアルに迫りたい願望はある。

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    2018/12/22 23:30

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