セールスマンの死 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「セールスマンの死」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/11/16 (金) 19:00

    とにかく戯曲が優れている。どこもすきのない、緊密に組み立てられた芝居。去年、テネシー・ウイリアムズの「欲望という名の電車」(大竹しのぶ主演)を見たが、アーサー・ミラーとウィリアムズが、アメリカ戦後演劇の双璧であることがよくわかった。家庭劇、主人公の持つ過去零落、舞台の緻密さでよく似ている。

    風間杜夫は最初ずっとぶっきらぼうで嫌味な感じだったが、だんだん苦しい内面も見せていく。「俺は愛されていたんだ」というセリフが痛切だった。山内圭哉は実は気弱で自己主張できない感じがよく出ていた。
    片平なぎさの母親もよかった。同情を誘う演技だった。実は現状にしがみついているだけで。夫の誤った教育も放置している無力で罪深い存在なのだが。

    幸せなマイホームが、最後は誰もいなくなるように、意外と静的な芝居だと思った。

    ネタバレBOX

    戯曲を読んでから見たので、父ウィリーの浮気場面を見たことが、長男ビフが父に反発する原因だと思ってずっと見た。そのことは冒頭から「あいつは詐欺師だ」など、伏線として巧みに示されている。

    ただ、舞台で見ると、最後の最後にビフがウィリーの前に泣き崩れる場面、「俺はそんな大人物じゃないんだ。もう解放してくれ」で、最初の理解が表面的だったとわかった。実は、反発の裏で父の過剰な期待に縛り続けられ続けていたのだと。ビフはそこから抜けようとして、浮気で父を見限ろうとしても、どうしても抜け出せなかったのだと。
    「父と子」がこの芝居の柱なのだが、その関係も依存と反発とアンビバレントな関係にあることがよく分かった。

    ウィリーは最後に「実はビフは俺のことを愛していたんだ」とうれし泣きする。だからビフは大人になれないんだということを脇において。皮肉な喜びだ。「思いきり抱き締めてやればよかった」というセリフは、自分勝手ともとれる。が、父の出世主義の押しつけをやめて、ありのままのビフを受け入れればよかったと取れば、救いにもなる。どこまでも深い戯曲だ。

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    2018/11/19 08:30

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