満足度★★★★★
この舞台のことをどう表現したらよいのか分からなかった
思うところがたくさんあって言葉を紡ぐことが難しかった
確かなことは、もっとも印象に残った舞台になったこと
誘われるままに出かけたのでフライヤーも持っていなかったが、受付で渡されたものを見て「ん?」
小さな半透明のプラスチック材の両面に裏写りの状態
チケットにキーチェーンが付けてあるのに再度「・・・」
ああ、teamキーチェーンだったな、しかし細かいところまで凝るなぁ、おしゃれだねぇ
これらの細工はそれぞれ意味を持っていた
テーマは実に重たい
犯罪被害者の遺族と加害者・・・
だがそれに止まらない
妻と赤ん坊を少年に殺された夫(岡田雄樹の)が主人公
いきなり彼が自殺しようとするシーンから始まる
苦悶するその弟(奏君)
表向きは保護観察中の犯罪者を雇用して美談を作りながら、それで食っている会社を巡る人たち
弟が働くカラオケ
それらの話が、素晴らしい舞台装置で見事に三分割された空間の中で進む
様々な思惑を持った登場人物の三つのまとまりが複雑に交錯して話しは進んでいくが、プロットはあくまでもそれを傍観しているように淡々としている
そう、「語らない」
今年何度も「語られ」てシラケた身には「そうだよ、そう来なくちゃ」と嬉しくなる
最後の主人公が妻と子の映るビデオテープを、引きちぎるシーン
それは究極の絶望なのか、それとも「時」と諸々の出来事により憎しみが薄まり赦しを見出した・・・のだろうか
絶望の淵からほんの少し顔を上げたようにも見えたが・・・
登場人物の誰にでも感情移入できる、演者がまたなりきって演じている中で(演技の巧拙でを超えて)、どこに視点を置けばいいのか今もってわからない
そう、この話には「正解」はない
帰りがけ、あのフライヤーは加害者と被害者遺族、あるいは社長の娘といったものの表と裏を表現したかったのではないかと気づいた
今もあの効果的だった(ボリュームの変化も)オルゴールの子守歌が頭の中を回っている
残念ながら終わってしまったが・・・